□言葉ばかり探してしまう
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君のことを考えてると・・・胸が張り裂けそうだ、と。


昔誰かが言っていた。



そんなに好きなら、想いを伝えればいいのに、と俺が言うと、


その人は伏し目がちな眸で、俺に「それはできない」と、言った。



なぜできないのか、


子供の俺にはわからなかった。






だけど・・・






年月が過ぎて、






君が

俺を好きになった時。




俺は思ったんだ、







ああ、先輩はこのことを言ってたんだって。








ステージに向って熱い視線を送る君に、俺はけっして"応えて"はいけない。



ほんとうなら応えたい。


だけど応えられない。


俺はたぶん、君に視線を合わせる時だけ"特別"になってしまうだろう。


それはたぶん、
"みんなの自分"ではいられなくなる。


均衡を崩す鍵になってしまうってわかってた。





君が、

必死になって

俺を見つめる視線が、願わくば合わなければいい・・・



気になって仕方がない君の姿が、網膜に焼きつくほど俺を掴んではなさないのに。



俺は君に目も合わせられない。




ひとは恋をすると臆病になる。




だって俺は、





君と目が合った瞬間に、胸が張り裂けそうになるから。







好きで、

好きで、


どうしようもない気持ちがあふれてしまう。







姿が見えれば喜んで、


いなければ落ち込んでしまう。


そんな一喜一憂に気持ちを弄ばれて


恋はひとを弱く・・・・

脆くさせてしまうんだろう・・・




だから、
この願いはけっして叶ってはいけない。






あの人と同じように、自分も心に蓋をしなくちゃいけないんだってわかってる。





なのに――。

















【言葉ばかり探してしまう】
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