□最悪な日
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悪い場面に出くわしたなぁ、と思って肩を竦めてそっと横の壁に寄り掛かったのは、
この角を曲がった向こうになまえちゃんがいると気づいたから。
なまえ「私はあなたのこと好きでも、あなたは私のこと好きじゃないってことでしょ?」
男「そうじゃない」
なまえ「よりを戻せないってことはそういうことじゃない!」
男「お…お前は俺のこと愛せるのかよ!」
なまえ「私のことを好きだと言ってくれる人はたくさんいるわよ?でも、私はあなたが好きだといってるのよ?」
男「・・・・」
なまえ「私の手を取れないのはあなたの方なのよ」
男「彼女はもう・・・・」
そう言ってうつむいたのか。
男からはしばらく沈黙が続き。
彼女からは小さな「さよなら」が聞こえて。彼女は俺がいるのとは反対の方へ靴音を響かせていった。
まったく、今日は最悪の日だ。
こんなにも彼女に「好き」をもらえる男なんて・・・正直見たくもなかった。会いたくもなかった。
だけど俺は、
ちらりと壁の向こうの男を覗き見てしまった。
・・・なんてことない。
平凡な男が俺の目に焼き付いた。
『私のことを好きだと言ってくれる人はたくさんいるわよ?でも、私はあなたが好きだといってるのよ?』
その、一握りの、君を好きだというたくさんの男の中に、俺も含まれているのだろう。
男のエゴで君を手放したのに、君はまだ、
その男に縋ろうとする。
別れるように何度、説得してもだめで。
君は結局はその男に囚われたままだ。
こんなちっぽけな・・・・
へいぼんな男のために俺は・・・
きみの1番にはなれないのか・・・
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