□お姉さん、誰か僕と付き合ってくれないかなぁ
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いきなりこんなことを言われたのは、まだ肌寒い空の下。

少し賑わう街の音を耳に入れながら、私は膝掛けに足を包んでスチールの椅子に座ってた。

行きつけの、お気に入りのカフェ。

テラスとして用意されたウッドデッキの席は、中よりも気に入ってる私の特等席。外はまだ寒いので、空席が目立つ。


なのに、相席をするように隣に腰掛けてきた男の子は、私の顔をじっと見つめてにっこりと微笑んだ。


私はびっくりして大好きなハニーカフェオレに口をつけようかとしたまま固まった。


むしろもう少し遅かったらハニーカフェオレを吹きこぼしてたかもしれない。



目を瞬かせて彼を見つめる。


男の子はあどけない顔でにこにこしている。


人畜無害・・・そんな顔だ。



私はそんな子から発せられたその、耳を疑うような台詞を、もう一度聞き返した。





「・・・・え。今なんて?」

「僕ね、彼女ができないの」


くりっとした丸い瞳を瞬きさせて、じーっとこちらを見つめるその青年・・・いや、少年・・・?を見つめる。

金髪碧眼…と、まではいかないが、線は細く、髪の毛は柔らかそうで、笑顔がかわいい。スタイル、ルックスは…とてもいいように思える。



だとすれば…

何かもっと重大な何か欠点でもあるのだろうか?


・・・いや、このあどけない無垢そうな顔の裏に・・・?


なにか・・・重大な欠点・・・?


いやいや・・・。


私は難しい顔をして彼を見つめ。


ハニーカフェオレを持ったまま固まった。




「お姉さん、」


「・・・ん?あ・・・え?」



あんまりしげしげと見つめていたので、

目の前の男の子はちょっと恥しそうに顔を赤くしていた。



「そ、そんなに見つめないで…」

「あ、ごめん…でも、なんで?」

「僕…誰かと付き合える?」

「へ?」

「誰か、僕と付き合ってくれる?」

「いや・・・そ、れは、どうかな…?私にも…」

「じゃあ、お姉さん僕と付き合ってくれる?」

「・・・・え?私?」



コクコクと首を縦にふって。

男の子が私に、先ほどから弱いその顔で微笑む。







「お姉さん、僕と付き合ってくれないかなぁ〜?」







歌うように体を左右にふわふわ揺らしながら、男の子はじーっと私の顔を見つめてまっすぐ言った。



「・・・・え、わ、私でいいの?」

「お姉さんがいいの」

「え、初対面なのに?」

「僕知ってるよ?お姉さんが○○○さんだって」

「・・・・え、…へ?」


口をぽかんとあける私を見て、男の子はくすくす笑いながら、テ-ブルに置いたままにしていたお財布からはみ出したカードを指して言った。


「いつも出してるメンバーズカードに、名前…書いてあるでしょ?」

「・・・え?」

「僕、毎朝○○○さんのハニーカフェオレ作ってるんだもん」







「・・・・え、えええ・・・っ!」






まじまじと見つめて瞬きをすれば、白と黒のお店の制服を着ていた店員に・・・みえ、なくもない。


いつも顔なんて見ないで手元にしか視線を向けなかったからわからなかったなぁ・・・・。


こんなにすぐ近くに・・・自分を見ててくれる人が居たなんてことに。



男の子は「テミン」と書かれた自分のネームプレートを鞄から出して見せながら、



自分の作ったハニーカフェオレを飲む私を見つめて。


嬉しそうににっこりと、微笑んだ。




「○○○お姉さん、僕と付き合ってくれないかなぁ〜?」



「え、えええっ?!?」






わたしは今度こそハニーカフェオレを吹き零しそうになりながら。


彼にコクリと頷いていた。













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