□好きすぎて食べちゃいたいね
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「ここがこうで・・・この文法のときは、こう・・・キボム、わかった?」
「うんうん・・」
山育ちで目はいいだとか、視力はいいと自分で言ってたくせに、なぜだか最近わけのわからないダテ眼鏡をかけだしたキボムは、今、私の横に並んでもっか勉強中。
外国語の勉強を教える私。勉強熱心な教え子のために、このところ宿舎にまでつめて家庭教師のように勉強を教えていた。
最初は事務所が用意した教室で教えていたのだが、
キボムがそれじゃあ足りないと家にまで呼ぶようになり・・・
こうしてリビングで二人で勉強をはじめて約1か月が過ぎた。
最初のころはチャチをいれながらもほかのメンバーも加わり、わいのわいの勉強していたのだが、1人消え・・・2人消え・・
とうとう、キボムと2人だけになってしまった。
最初はふつうに2人で勉強していたのに、
最近は妙によそよそしいキボム・・・。
とうとうわけのわからないメガネまでかけだして・・・
支障がないっちゃ、ないが。
となりにならんでたのが今までと雰囲気違うってだけで、妙にやりづらい・・・。
「ねぇ、なんでメガネかけてるの?」
「んー?内緒〜」
キボムは下を向いてせっせと例文を作っている。
もうすっかり上級者レベル。
そろそろ私なんていらないんじゃない・・・?
「・・・え、なんか僕間違ってるわけ?」
「・・・・へ?」
じーっとキボムの方を見ていたせいで、視線を気にしたキボムが自ら、紙から目線を外してこちらを向く。
じっとまっすぐに見つめられて、その瞳に吸い込まれそうになる。
キボムは薄く唇を開いて、
何か言いたげにくちびるを動かし、また噤んだ。
「・・・どう、したの?」
「いや・・・なんでもない。何か文法間違ってる?」
「・・・ううん、まちがってない」
フイッ、と視線をそらすようにまた問題集に向き合うキボム。
いったい・・・どうしてしまったんだろう?
「・・・・ねぇ、ほんとになんでメガネなんかかけだしたの?レンズ、入ってないんでしょ?」
ずい、と近づくように、彼の眼鏡を覗き込む。
「ちょ、っと!○○○!」
「だって〜気になるもん!」
「顔が・・っち、近いからっ!」
「は?」
「顔が近すぎると、キスしたくなっちゃうでしょ?」
「え・・?」
そう言ったキボムは、とつぜんカタン、と眼鏡を机の上に置いた。するりと指を絡めるようにわたしを固定すると、そっと近づいて、
耳元に囁いた。
「好きすぎて食べちゃいたいね」
この言葉の意味に私が気が付いたのは、
もう、
彼の唇が触れた、あと。
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