□もっと溺れて
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テミン「ははっ、○○○はヌナなのにほんとにかわいいね」
○○○「…なぁっ!」
テミン「照れてるとこもかわいい」
そう言って彼氏のテミンは、耳に当ててた受話器の向こう側で、「ちゅっ」とリップ音をたてた。
○○○「ちょっ・・!」
あわてる私を電話の向こう側で大げさに笑って。
「やっぱりかわいいやぁ」、なんて。
年下のくせに私をいつも弄ぶ大好きな彼。
テミン「僕いつも、○○○ヌナのこと想ってるからね」
電話が終わるよっていう時の言葉・・
でも、それは、いつもよりも少し重みを帯びてて・・
私は少しためらうように、「うん」と小さく頷いた。
テミンがこんな風に言う時は、たいてい、しばらく会えなくなる時。
忙しかったり…
スケジュールがあわなかったり…。
このところ、たくさんあえてた時期が長かっただけに…少し堪えるかもしれない、なんて。
ヌナだからしっかりしなくちゃいけないのに…
やっぱり会えないのはさみしくて。
素直に歯切れのいい返事が出ない。
どうして今日…
電話、だったんだろう。
会えなくなるってわかってるんだったら・・
会いに来てくれればよかった…
それさえもできないほど…
急に、忙しくなったのかな。
年上なのに。そんな私が想像もできないほど忙しい毎日を送っているテミンくん。
テミン「・・・・○○○ヌナ?」
言葉を発さなくなったこちら側を心配して、
テミン君が私の名前を呼ぶ。
○○○「あ…うん、平気。ごめん・・」
テミン「なんで謝るの?」
○○○「え…だって・・」
テミン「だって、何?」
いつもより強い、怖い口調のテミンくんに、
私は何を間違えてしまったのかと少し前の自分を思い起こすけど、何も思い当たらない。
私は怯えるように口を開いた。
○○○「ど…どうしたの?」
テミン「ヌナは僕が急に会えないって言っても平気なの?」
○○○「・・・・え?」
突然のことに、どう返事をしていいのか困る。
私は、近くなるわけじゃないのに、携帯をぎゅっと握って受話器の向こうに耳を澄ませた。
テミン「もっと溺れて」
○○○「え?」
テミン「もっと!僕に溺れてよ!」
きっと…受話器の向こうのテミン君の顔は、真っ赤だ。
テミンくんの声はそういう…声、だった。
○○○「どうしたのよ・・・」
私は思わず、ぷってふきだして笑ってしまった。
テミン「こら、」
○○○「ごめんごめん」
テミン「さみしかったら…さみしいって、言っていいんだぞ」
○○○「・・・・ん」
テミン「そーいうの、おねーさんだから…とか、無理するところじゃないと、僕思うんだぞ」
○○○「・・ん」
テミン「ヌナ・・・」
○○○「ん?」
テミンくんは、甘えたような声で私を呼んだ。
テミン「○○○ヌナは・・・・僕のこと、好き?」
○○○「うん。すごく好き、だいすきだよ」
そういうと、受話器の向こうは途端に静かになってしまった。
○○○「・・・・・・・て、てみな?」
名前を呼ぶと、
すぐ近くにいるような、くすぐったい息のかかるような音が耳にきこえてきた。
○○○「・・・・え・・て、照れてるの?!ねぇっ!」
俯いて、息を殺すように呼吸する音が聞こえる。
テミンが照れた時にする仕草を思い出す。
テミン「・・・・ごめん、」
○○○「へ?」
テミン「やっぱり僕の方が○○○ちゃんに溺れてるみたいだ・・」
その最後の言葉に、私は耳から火が出そうなほど
熱くなった。
世間一般では、
こういうのをバカップル、というらしい。
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