□ぎこちなさ
1ページ/1ページ




たとえば・・・・・・・・6年経った今でも存在する。








【ぎこちなさ】





「ただいまー」


キボムが帰ってくる。


「ねーねーそれでさー・・・っていうか、聞いてる?ヌナ?ボクの話ちゃんと聞いてる?」


「きいてますきいてます」


台所ではテミンくんが饒舌に今日のボク報告。



「た、・・ただ・・い、ま・・?」



ほら。

なまえは戸棚の上に食器を片付けようとして両手をあげたままで。

急いで僕を迎えに行くつもりだったのか、手拭きを持ったまままごまごしてる。(テミンに道をふさがれて。)


なまえは申し訳なさそうな顔をして、帰って来て台所に顔を出した僕に頭を下げた。



なまえ「あ、ご、ごめんねっ・・夕飯、食べた?温めようか?」


key「いいです、外で食べたんで」


テミン「ねーねー、それってつまりボクに気があるんだと思う?ないんだと思う?」


なまえ「テミンくん、その話もうどっちでもいいから向こう行きなさい」


テミン「酷っ!!今日のなまえヌナひどいよ!」


なまえ「keyくんは3日ぶりに帰ってきてるんだから・・・」




横に入ってきたのか、最初からいたっていった方が正しいのか、テミンのうるささに気圧されるようにして、僕は台所から遠ざかる。

スプリングコートを脱ぎながらリビングの横を通り過ぎると、ソファーでテレビのサッカーを観戦していたミノが、いきなり背中を向けたまま話しかけてきた。



「この試合、どっちがフリー決めると思う?」


「え・・・・いきなり、きかれても・・・」


「そうだよね」




「・・・・・・」



会話・・・・は、終了したのか、な・・?



keyは構えてみたけど、ミノからそれ以上突っ込んだ会話は帰ってこなかった。

ミノはこういう時、どう接していいかわからない。


気さくに話しかけてきてくれるところは、僕にも気にかけてくれてるということなんだろうけど、どうにも趣向が違うせいか、会話があまり続かない。

でも、よく気にかけてくれてる、んだと思う。

こうやって、テミンにていよくあしらわれるようにして通り過ぎれば、部屋を通り過ぎる前にこうして一声かけてくれるのだから。

まぁ、その会話がもっと続けば楽しいんだろうけど、こうやって一声だけでも十分なんだと、今はそうやって思える。




「あれっ帰ってたの〜きーくん」


そう言って部屋から出てきたのはジョンヒョン。


「ああ、ただいま」


「家の場所忘れてなかった?大丈夫だった?」


「ばかじゃないの?」


「www」


クツクツを肩を揺らして去っていくヒョン。


いったい何しに来たんだよ。


けど、声が聞こえればこうして出てきてくれるヒョンは、とてもありがたい存在。

くっだらないどうでもいいことをぽんぽん言い返してくれる相手がいるのも、ここに帰ってくると安心するひとつ。



ミノ「兄さん、上着廊下に脱ぎっぱなしでしたよ」


ジョンヒョン「いいの、あれ、明日も着ていくから」


ミノ「部屋にもってけばいいのに」


ジョンヒョン「明日着ていくようにあそこに置いたの!」


ミノ「あー言えばこー言う」



うしろで会話してる2人をよそに、ボクはリビングのドアをあけて自分の部屋に行こうとした。


ドアノブを握った瞬間、グンッ!と力強くドアが戻ってきた。



「えっ、」


「あ・・」



押して入ってきたのはオニュヒョンだった。




「あ、あ・・・・え、と・・ただ・・い、」


「おかえり、」




ヒョンはそういうと、3日空けてた僕にも、なんでもないみたいに、普段とおなじよーな態度で、挨拶して、向こうに行ってしまった。


リビングではミノとジョンヒョンが馬鹿みたいなことを言い合ってる。台所ではまだテミンの声がうるさい。

オニュヒョンに、ちゃんとただいまって言えればよかったな。

せめて、お土産でも買ってくればよかった。

あ、明後日も行くのにそれはないか。

べつに家に帰ってくるのに手土産もおかしいよな。


一人悶々としていると、


「どうしたの?」



お酒とグラス片手にオニュヒョンがまた戻ってきていた。



今度は僕が、ドアを塞いでヒョンの邪魔をしている。



key「あ・・あっ、ごめん…邪魔だったよね・・」


オニュ「べつに平気だけど・・・、飲む?」


そう言って、どう見たって度数の強そうな琥珀色の瓶を振ってみせるヒョン。


key「いい。明日も仕事だから」


オニュ「そう?」



ヒョンはグラスを揺らしながら自分の部屋へと入っていった。




なまえ「よーし、じゃあ、わたし帰るから!」


エプロンを外したなまえが、手を拭きながらこちらの向かってくる。



ジョンヒョン「家まで送ってこうか?」


なまえ「いい。この前それやってもらってマネージャーさんにちょー怒られたから」


ジョンヒョン「べつに気にしなくたっていいのにー」


なまえ「やだよ、ジョンヒョンだって怒られたでしょ?アイドルとしての自覚がーってまたはじまるよ?」


ジョンヒョン「ヒョンの口癖だと思っとけばいいじゃん」


なまえ「長すぎるわ」


言い合いながらこっちにやってきたなまえさんは、僕を見ると、にっこり微笑む。



なまえ「はい!」


key「・・・・え?」



手渡されたのは、小さな包装紙で包まれた箱。



なまえ「昨日泊まりで出かけててね、今朝帰ってきたの。みんなにはもう渡したんだけど、keyくんにはまだだったから・・・・お土産!」


key「え・・・・あ、あ・・・りがと・・・・うございます」


なまえ「やだぁ!敬語なんて!どうしたの?」


key「え・・いや、僕いつも敬語ですよ」


ミノ「訛ってて聞き取れなかった」


なまえ「聞き取れなくないっ!」


key「え・・僕、間違ってました?」


なまえ「何にも間違ってないしkeyくん何も悪くない」



ジョンヒョン「俺が食べてやろうか?」



あ、食べ物なんだ・・・。


小包を眺めながら思う。



key「大事にいただきます」



なまえ「どうぞどうぞ」



なまえは嬉しそうににっこり笑って帰っていった。




6年経っても、僕たちはぜんぜんかわらない。



成長してないわけじゃないのに、不思議。





僕はもう一度小包を見つめた。






今度の仕事にはなまえさんにも贈り物を買ってこよう。












fin


[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ