□俺の春、来い!
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キボムが、「ほら、いくぞー」って。
綺麗な女の子たちいっぱい従えるみたいにして俺を呼んでる。
俺だってきっと、素直にそっちに行けばいいんだろう。
俺はアイドルだから。
アイドルとつるんでた方がいいんだろう。何かと都合もよさそうだ。
アイドルがアイドル同士、なんて誰が決めたんだろ。
会社の人が社内恋愛しか出会いがないみたいに、
社長とか重役さんとか、みんな偉い人のツテとかコネで見合いの話が回ってきたり。
きっとみんなそうやって、いーひとはいい人同士。偉い人は偉い人同士。
アイドルはアイドル同士。
そうやって同じ位とか地位とかレベルとか。
そういうのが似たもの同士くっつく、って。相場では決まっているんだろう。
key「おいていくよー?」
ジョンヒョン「わりい!なまえちゃんと用事あるから今日はパスー!」
key「なまえー?だれそれー?一緒にくればいいじゃん?」
ジョンヒョン「ばぁか!秘密のデートに決まってんだろ〜」
俺はヒラヒラとキボムニ手を振る。
華やかな人の群れは、がやがやと騒がしさと一緒に、すぐにいなくなって、あたりは静まり返った。
俺は、くるりと足を返すように、事務室のカウンターから窓の向こうを覗き込む。
なまえちゃんが、奥で帰り支度をしている。
もうすぐ出てきそうだ。
なまえちゃんは、ただの事務員さん。
いつもみんな、素通りしちゃうような。
だけど、
俺は、素通りはできなかった。
いつもいい声で、いい匂いで、「おはよう」とか「いってらっしゃい」とか「おかえり」とか声をかけてくれる君に、
俺はちくいち、ドキドキしてた。
アイドルがアイドル同士くっつく、なんて誰が決めたの?
アイドルが一般人をすきになっちゃいけないの?
アイドルと一般人の境界ってどこにあるの?
俺はね?
・・俺は・・・
・・・・なまえちゃんが!っ・・・・好きなの!
そう、心の中で叫んだところで、
なまえちゃんが事務所のドアを開けて出てきた。
なまえちゃんは俺を見て、びっくりしている。
外は雨だ。
なまえちゃんに傘の持ち物がないのを確認して俺は声をかける。
ジョンヒョン「・・・・・・・・・乗ってく?」
なまえちゃんは、面食らったようにめをぱちぱちさせた。
【俺の春、来い!】
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