□君に云えないこと
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俺が今、どこで、何をしてるかとか。
あんまり気にしてもらえない、なまえちゃん。
俺は毎日彼女のSNSを見漁ってるっていうのに、なまえときたらまるで興味なし。
なまえは絶対釣った魚には餌をやらないタイプで。
俺は自力で餌を探してでも水槽に留まれるタイプの魚だ。
10回連絡するうちの1回くらいに釣れるなまえちゃん。
映画見に行かない?とかは3回の内2回は断られて。
ご飯食べに行かない?も7割がた失敗している。
彼女には、かしこまった、とか時間的にかなり制約がある、とかとにかく構えられてしまうともうアウト。
一番よく効くのが、
ジョンヒョン「今から会えない?」
手っ取り早くて。打算とか考える間もなく。
とにかく会うだけ。
それで満足するからって。
そうすると、決まって会ってくれる。
9回手をこまねいて、あの手じゃないこの手じゃないってあれこれ計算しつくしても、結局は、「今から会いに行ってもいい?」っていうそれだけに落ち着く。
ジョンヒョン「もう・・会ってくれないかと思った」
なまえ「そんなこと・・・いつも会ってるじゃない」
ジョンヒョン「10回に1回くらいでしょ?」
なまえ「忙しいから・・・・」
ジョンヒョン「ねぇ、LINEしようよ。携帯貸して?」
なまえ「え。いいよ。私可愛いスタンプとか持ってないし」
ジョンヒョン「スタンプ関係ないし。てか、なんでそんな拒否するの?」
なまえ「いや、別にLINEしなくても成り立ってるじゃん?」
ジョンヒョン「成り立ってないよ!俺もっとなまえちゃんに話したいことあるし!」
なまえ「いや、私別にそういうのいいから‥」
ジョンヒョン「俺はしたい」
なまえ「駄々こねないで」
これって駄々なの?なまえちゃんにとって俺ってどんな存在?
けど、面と向かって怖くて聞けない。
ジョンヒョン「ねぇ・・・俺にしてよ、」
なまえ「いつもシテるじゃない」
ジョンヒョン「そういうことじゃなくて」
潤んだ目で見つめたって、必殺技も効果なし。
なまえ「・・・今日はもう・・いく?」
ジョンヒョン「・・・わん」
先に抜けていく腕に、縋るように掴む俺。
なまえちゃんは立ち止まってやんわりと俺の手を握り返した。
そして俺の手を持ち上げて、甲にキスを1つ落とす。俺の方を見つめながら。
(ああ‥君はどうして俺を虜にばかりするんだろう‥)
こうやってまた、君に云えないことが増えてく。