□Rain
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なまえちゃんが夜中に、意を決したように言の葉の庭観ようよってDVD持ってきたから、
「え、今?」って思ったし、それはぼくはもう何度も見てるけど・・・と思ったけど、
まぁ、1時間だし付き合ってやるか・・・という気持ちで、重い腰を上げる。
なまえ「やっぱりRainが頭から離れなくなっちゃって」
テミン「秦基博?なまえちゃんサントラだけは無駄に聴いてたじゃん」
なまえ「うん。ずっと興味あったけど、テミンくんが新海誠好きって公言してから見れなくなってた」
テミン「ぼくのせいなの?」
ぼくは苦笑いして。ふたりでリビングにやってきて、なまえちゃんがテレビをつけて画面の横にある挿入口にDVDをセットする。
ソファーに戻ってきて、隣に並んで座る。
テミン「サントラ、ユーチューブで散々見てきたでしょ」
なまえ「うん・・・・」
テミン「内容なんて見たようなもんじゃないの?」
なまえ「うん。先生だってことも知ってるし、お弁当を交換するところも知ってるし、家でアイロンかけるところも見たし、階段で抱き合うシーンも見た」
テミン「それ、全部だよ」
なまえちゃんはガタンッとソファーを叩く真似をして憤慨したように僕を見る。
なまえ「全部じゃない!まだピースはまってない!」
ぼくにとっての見慣れたオープニングが始まり、ヒロインが公園でビールを飲みだす。
なまえ「テミン君が急に新海誠監督好きって言いだした時さ、危ういんじゃないかなって思ったよ」
テミン「なんでよ」
なまえ「いや、だって狙い過ぎな設定じゃない?17歳と27歳の設定だよ?」
テミン「いや、意味が分からないけど」
なまえ「あの頃は怖すぎて観れなかったなぁ」
テミン「セリフは少ないのに絵で全部わかるから」
なまえ「テミンくんそういうの好きな人だったらどうしようかな〜って」
テミン「意味が分かんないけど」
なまえ「でもこないだ君の名はも好きみたいに言ってたからさ」
テミン「なまえちゃんがまだ頑なに観ないやつね」
なまえ「いろいろ気持ちの整理がいるんだよ」
テミン「ないよ」
ふたりして、しばらく没頭するように画面に流れる景色を眺めて。
エンディングに差し掛かる手前で、なまえがやっぱり予想通り、泣いてた。
テミン「なまえは絶対泣くと思ってた」
なまえ「・・・・泣きたいから借りてるんだよ」
テミン「想像通りだった?」
なまえ「・・・・うん、まぁ‥」
テミン「だからなまえちゃんサントラききまくってるから全部見てるんだって」
なまえ「・・・・そうみたいだね」
鼻を啜りながら黙り込むなまえにしばらく付き合って。
それから、再生の終わったDVDをテレビの横から取り出してケースにしまった。
テーブルの上に戻して、またソファーに戻ってきて腰かける。
なまえの肩を抱くように、背もたれに手をかけて。
テミン「今日泊まる?」
なまえ「・・・・・・テミンは・・・どういうところが好きなの?」
テミン「絵?あ、待って、なまえが?ってこと?」
なまえ「いや、違う」
テミン「なまえの好きなところはいっぱいあるよ?料理が上手なところとか、歩くのが上手なところとか」
なまえはちょっと吹き出してから、「ばか」って言って笑った。
それは全然いやな言葉じゃなくて。
テミン「作品に出てくるような人が好みなんじゃないよ。純粋に絵が綺麗だから」
なまえ「私も絵は綺麗だなって思うけど、題材は万人受けしないんじゃないかなって」
テミン「ぼくたちみたいだね」
なまえは困ったようにはにかむ。
テミン「誰かと同じことをしないっていうのは、こわい?」
なまえ「そうじゃなくて‥」
ぼくはなまえに首を傾げる。
かしげながらなまえの方を見つめて。少しずつ距離を詰めるように顔を近づける。
なまえ「そういうなんか・・・偏った好みに思われるのって、誤解を生むんじゃないかなって・・・・思ったり、したんだけど・・・」
最後はもう顔を近づけ過ぎて、目を瞑っちゃった彼女の瞼にキスをして。
テミン「ぼくは偏った趣味趣向で構わないけどね」
そう言って唇にもキスを落とした。
なまえは、唇の離れたぼくの顔を見て照れたように笑った。
テミン「年上が好きでもぼくはぼくだよ」
なまえは困ったように僕を見る。
なまえ「私は・・・・まだ、悩むよ」
ぼくはそんななまえににこっと笑って立ち上がって。彼女の腕を引っ張ってソファーから立ち上がらせた。
テミン「でもぼくはなまえの美味しいご飯が食べられなかったら死んじゃうけどね」
なまえは「そうだよね」って言って笑った。
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