□魔法の手
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なまえちゃんは魔法の手を持ってる。


ある時は、

炊飯器にご飯が1人分しかなかったとしても、「ふやかせばいいか」っていって2人分のリゾットを用意してくれる。


パンがない時にジャムを買って行っても、「12分待ってね」って言って蒸しパンを作ってくれた。


そして今、昨日レンジで温めて何切れか食べてそのままにしてあったパサパサのさつまいもを、

ナイフで丁寧に皮をむいて、黄色い部分だけをボウルに入れて均等になるまですり潰してる。


チューブしかないバターに、牛乳、引き出しに入れっぱなしのスティック砂糖を取り出してくる。

卵を半分こにしてボウルに混ぜる。


黄金色の中身を手で捏ねて楕円形にして鉄板の上に並べていく。


綺麗に並んだそれに、なまえちゃんが100均で買ったプラスチックの刷毛を使って卵を塗ってく。





ジョンヒョン「何分焼くの?」


なまえ「10分くらいかな。卵何回か塗りたいから」



オーブンに入れてダイヤルを回すと、なまえちゃんはぱぱっと汚れたものを流しの上で片付けていく。


水きりラックにボールを乗せると、解き卵を片手にまた戻ってきてオーブンを確認。もう一度卵を刷毛で塗っていく。


てきぱきとお皿の準備。



なまえ「何飲む?コーヒー?」



俺はまだ夢見心地みたいな姿で立ち尽くしてた。




ジョンヒョン「うん…飲む」



寝ぼけ眼な俺に微笑んで、なまえちゃんがコーヒーを用意してくれる。



湯気の立つカップを目の前に置かれると、チーンと回ってたダイヤルが音を鳴らした。



開けたオーブンからはふわっと甘い匂い。



なまえ「いい感じに焼けたね」



お皿に並べられた黄金のスイートポテト。


それは昨日の食べかけの蒸かしイモ。


なまえ「混ぜただけで漉してないから粒残ってるかもよ」


ジョンヒョン「へ?」


全然思ってもない言葉が返ってきてびっくりした顔をする。



促されるまま口に入れたそれは甘くて。予想通りに舌によく合う優しい味。



昨日胃に入れるためだけにふやかしたのとは全然違う。



同じものなのに‥すごいな。




なまえちゃんの手は何でも作れる魔法の手だ。




それを言うと、必ず謙遜して作ってくれなくなるからもう言わないけど。



俺はなまえちゃんのことを・・・・密かにそんな風に思っている。




【魔法の手】






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