□好きな人しかわからない
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ジョンヒョン「ヒョーン!遅れるよー!」





オニュ「・・・・ん、んぅー」





寝ぼけ眼でソファーから起き上がるオニュ。彼の頭をひざまくらしてあげてた彼女もモゾリと体を揺らす。


彼女の名前は、なまえ。



オニュ「・・・・んー・・なまえー、朝だって。起きよー」



二人して部屋にも行かずにソファーでDVDでも見ていたのか、

コーラとポテトチップがテーブルに置かれたまま、テレビは青い画面を映し続けている。



なまえ「・・・・んっ・・・うぇ?今何時?」



オニュ「7時前」



なまえ「・・・・っ?!遅刻じゃないのっ!あたしはッ!!」



バッと寄りかかってたヒョンを振り落すようにして起き上がり、着替えを持って猛ダッシュでバスルームに向かう。


どたんばたん廊下に大きな音を響かせて、しばらくして

スカートのファスナーを持ち上げながら前髪を持ち上げるピンを口に咥えて戻ってくる。

寝癖を直すように濡らしてきた髪に、手に持ってきたドライヤーとスプレーをオニュに渡し、なまえはソファーの下に座る。


テーブルの上に鏡をたて、眉毛を描いてアイメイクをはじめる後ろで、

オニュが文句も言わずに彼女の髪をブローしていく。


肩下まで伸びた綺麗な髪を指で梳くようにして撫でて、

いい匂いのスプレーを彼女の髪に振りかける。



オニュ「できたよ」


なまえ「サンキュッ!」


持ち上げた睫毛をぱちぱちさせながら、なまえはオニュからドライヤーを受け取るとコンセントを巻きながらまたバスルームに駆けてく。



なまえ「じゃ、行ってくるからね」


オニュ「僕今日3時からリハだよ」



なまえ「知ってる。遅れないように行くから!」


オニュ「わかった。気を付けてねー」


なまえ「ジンギもね」


グロスが寄れるから、いつも最後は投げキッスで別れる2人。



なまえはコートを羽織ってさっさと出て行ってしまった。






ジョンヒョン「・・・・ねぇ、ヒョン」




これは別に時々とかじゃなくてありきたりな風景。




オニュ「ん?」



ジョンヒョン「なんで、なまえとつきあってるの?」



オニュ「なんで?って?」



ジョンヒョン「だってほかに・・・もっと・・・いるでしょ。ヒョンのこと、大好きって女の人が」


オニュ「おかしなこときくね。なまえだって僕のこと大好きでしょ?」



ジョンヒョン「うーん・・大好きっていうか・・・」



正直。あんな寝に帰ってきて朝さっさと帰っちゃうようななまえさんが毎日ヒョンのことを大好きなのかどうかよくわからない。


ヒョンはいつも夜遅くまで起きてたり駅まで迎えに行ったり・・

おまけに髪までかわかしてあげたり・・・


夜食だって作ってあげるわけじゃないし・・・



もっと楽な・・・


という言い方はおかしいのかもしれないけど、


自分が何かをしなくても、


好きをくれる子を好きになればいいのに。



少なくとも俺はそう思う。





オニュ「・・・・なまえはね。一緒に居ると楽なんだよ」



ジョンヒョン「・・・へ?」



けど、返ってきた言葉は、予想とは違っていて、俺は一瞬目を丸くした。




オニュ「なまえといると、僕はただのジンギに戻れる」



そう言われて、ジョンヒョンはきょとんと目を丸くした。




ジョンヒョン「でもなまえは・・・・なにもしてないよ?」



オニュ「好きでいるって、何かしなくちゃいけないの?」



ジョンヒョン「でもヒョンはしてるよ。彼女のためにいろんなことしてる」



オニュ「僕は普段"もらい過ぎてる"から」



ヒョンが言う"もらい過ぎてる"っていうのは、ファンに愛情をたくさんもらってるってことを指す。



「だから逆に、僕は"何にもしない"なまえに、安心するのかも」なんて言いながら、


ヒョンは思い出したようにうっとりと目を細めた。



ジョンヒョン「おかしいよ。自分ばっかり何かする恋愛なんて」


オニュ「別に僕は何かしてあげてるつもりはないよ。したいと思うからしているだけで・・・」



腑に落ちない表情で渋い顔をしていると、


ヒョンは困ったように笑って。





オニュ「でもなまえは、会いたいって言えば夜中でも会いに来てくれるし、僕が言うこと何でも聞いてくれるんだよ」



といって俺ににんまりした。


「そういうわがままを言える相手って、なかなかいないと思わない?」と付け足して、ヒョンは俺を見てにっこりする。



やれやれ。

結局はこうやって惚気になっちゃうんだ。



ジョンヒョン「ヒョンのお人よし!」



悪態付くように言い放ったら、ヒョンはやっぱりにこにこ俺を見て笑っていた。









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