□いつもの。
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ジョンヒョン「なまえーー!!!」
玄関にあがり、大きな声で愛しい彼女を呼ぶ。
なまえは生クリームを体中にくっつけながら、トタトタとびっくりした顔で慌てた様子で走ってくる。
なまえ「どっ、どうしたのっ?!?」
案の定驚いた声を出す。
ジョンヒョン「・・・・いや、呼んだだけ」
なまえ「(ベシッ!)人がケーキ作ってんの知ってんでしょ!」
ジョンヒョン「だって〜〜」
駄々をこねる様にかわいらしい声で下からなまえを覗き込む。
なまえ「そんな顔してもだめ!」
ジョンヒョン「俺の誕生日なのに俺にかまってくれないってどーゆーこと?」
なまえ「そのジョンヒョンのために作ってあげてるケーキでしょ?」
・・・知ってるよ。
そんなことは。
俺は彼女のほっぺたについてた生クリームを指ですくってぺろりと舐めた。
ジョンヒョン「でも俺。なまえちゃんから特別なプレゼントなんて欲しくないよ」
なまえ「作ってる人になんてこというのよ」
むくれたように唇を尖らせる、俺は自分の唇に触れた指を彼女の唇に当てて言った。
ジョンヒョン「なまえちゃんはもう俺にとって特別なんだから、ふつーのプレゼントが、俺にとって特別なものになる・・・そうじゃない?」
なまえ「そーかもしれないけど〜」
歯切れの悪い返事をするなまえを腕の中に抱きしめ。じっと目を見つめる。
日付変更線を越えてすぐにもらったメールも
楽屋に届けられてた最初のプレゼントも関係ない。
そうじゃなくて、もっと
ジョンヒョン「今日あと2時間もない時間に帰ってきた俺にすることは、手作りケーキを間に合わすこと?」
違うでしょ?
彼女は「うーん」と唸り、「おかえり」と「お疲れさま」と「誕生日おめでとう」を全部言った。
でもまだ違う。
俺はゆっくりと小首をかしげて、そんな彼女が愛しくてふにゃりと笑い口元を綻ばせる。
正直、
腕の中に抱いてしまって
こう、顔を前におろすように近づけてしまったら
もうなんだか
どうでもいいこと、みたいにも、思えちゃうんだけど‥
なまえ「・・・ああ!いつものね!」
ポンッ、と手を叩き、
なまえはようやくわかったみたいにニッコリ笑って
俺の頬を包むようにして、そっと、その柔らかい唇を俺のくちびるに重ねて、はなした。
ジョンヒョン「誕生日にもらうキスは、彼氏にとっては一番のプレゼントだよ」
俺がそう言ってにんまり笑うと、
彼女は肩をおろして呆れたように俺を小突いた。
けど、それがいい。
俺の隣に君がいること。
それだけが――
【いつもの。】
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