□サインジュセヨ
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ある日。

横に並んでるのがオニュだってことに気付いた。

最初はびっくりして横をちょっと見て固まりそうになったが、

すぐに体勢を元に戻して正面を向いた。


なかなか変わらない信号に、思わず軽はずみな感じで声をかけてみた。




なまえ「・・・・オニュ、さんですよね」


ちょっと、よそよそしく。

彼はアイドルだから、最初はちょっとびっくりして。

目深にかぶってた帽子から覗いた目でこちらを見た。



ふつーに、平凡な、どこにでもいる男の子で。


私は安心したようにプッ、とふきだして笑った。



オニュ「ど、どうしましたかっ?ι」


おろおろする彼を手で制するように止めて。「なんでもないの」と肩を揺らした。


彼はまだ警戒しているみたいで、

私の対応にどう接しようか悩んでるみたいだった。


なので私は言ってあげることにした。



なまえ「あー、大丈夫、私、オニュペンじゃないんで」


彼が瞬きしてる間に、いつの間にか変わっていた信号がまた赤に変わった。



オニュ「あ、えっと・・」


なまえ「いつも、大変ですね・・」



信号機を見つめたままそう言うと、

オニュは、「あーそうですね・・」と気まずそうに言葉を返した。


変わらない信号機を前に二人して並び、


時間を持て余したオニュが一言…。




オニュ「サインでも・・・・書きましょうか?」



なまえ「結構です、オニュペンじゃないんで」



スパッと言い放つと、オニュはまたばつの悪そうな顔をして信号機に目を戻していった。



信号が変わるかな、って手前で。思い出したように、私が、



なまえ「・・・・あ、友達に1枚書いてもらってもいいですか?」



と尋ねると、彼はようやくいつもの笑顔を取り戻したようににこやかに笑って、

オニュ「ああ、いいですよ」


と、少し上機嫌な声を出した。




鞄の中をがさごそ探すが、いいものが見当たらない。

当然信号機はまた赤になっている。


オニュ「手帳に書きましょうか?」

なまえ「いえ、これ私のお気に入りなんで・・・・・あ、これだ!」


私は買ったばかりの日本版のCDを取り出した。


なまえ「これに書いてください」

オニュ「よく持ってましたね」


なまえ「はい。友達にあげるつもりで…あ、中身カードオニュですよ」

オニュ「ほんとですかっ」


オニュは紙の隙間からカードを取り出し、自分のが出てくると「ははっ」と笑った。


私はサインペンを彼に渡す。



オニュはさらさらっと筆を滑らせあっという間にサインを完成させる。


本当に・・信号の待ち時間でかけてしまうほどの速さだ。

さすがに1日何枚も書いてる人は違うわ〜・・


感心したように呆けてみていると、オニュがこっちを見ていた。


なまえ「・・えっ?え、なんでしょうか?」



オニュ「あなた、名前なんて言うんですか?」


なまえ「わ、わたしですかっ?!私はなまえ、です」


オニュ「なまえ、さんね。・・・なまえ、さんへ、っと!」


なまえ「Σうぇえいっ?!?ちょ!それ友達のって・・・ぇえっ?」



オニュ「友達は・・・・・また、会った時に僕、書きますよ」


なまえ「ぃゃ・・なかなか会えな・・」


オニュ「今日、会ったのは、なまえさん、でしょ?」



なまえ「え・・あ・・はい・・」



肩を落としてサインされたCDを手渡される。オニュは手渡ししながらクスクス笑っていた。




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