オリジナル

□アネモネの花束-アナザー-
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愛してる、とか、お前だけ、なんて。
信じる方が馬鹿だ。


「じゃね」
「待っ…――!」


足元に転がる汚いオヤジに手を振って走り出す。
あーあ。豚みたいに丸々太って。まったく裕福な証拠だね。
そんなキモイ豚オヤジ相手に体売って生計立ててる俺も俺だけど。
そうでもしなきゃ生きられない。
ここはGATE東・a-384地区。
治安最悪、金と体の需要と均衡が恐ろしく保たれている歪んだ街。
誰もが死なないように生きるだけ。
夢も希望もない。
でも死ぬのは怖い。
そんなギリギリを味わいたくもないのに毎日噛み締めながら生きている。


「あの豚見た目の割に金ねーなぁ…」


ドブ臭い路地裏を通り抜け、手にした金色のコインをちゃらちゃらと鳴らしながら大通りに出る。
まぁこれでなんとか5日はやっていけるはず。


「次どうしよっかな…」


貯えはいくらあってもたりなくなる。
出来る時にやらなければ。何があるか分からない所だから。


『金持ってそうなヤツ…』

「ねぇ」


ぼんやり周りを見回してたら突然後ろから声がかかる。
思ってたことが口に出てたか?とか思いながら振り向くと知らない男が一人立っていた。


「何?」


見た感じは30代ぐらいの優男。恰好もスーツで小奇麗。
おおよそこの街には似合わない風貌だ。


「君、名前は?」
「ヒサシ」
「ヒサシ君か、今から時間あるかい?」
「用件は?」
「……仕事しないか?」


仕事。
ここで俺みたいなやつに言ってくるのは間違いなく売春だ。
コイツもカモ。
返事の代わりに優男の唇をぺロリと舐めてやった。
手を引かれて。また、薄暗い路地裏に逆戻り。

仕事だ。


 
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