狂乱舞宴

□儚き蒼き日々を
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監禁されてからどれくらいたったのか、短くはないであろう月日、幸村は政宗に抵抗し続けていた
外には出れないし、勿論政宗以外の人間など会えもしない
だが鎖は部屋の中を自由に行き来するくらいの長さはあった
「…ッ……く、ハァ…」
何もすることなどある筈もなく、部屋の隅に寝転がり、幸村は息を荒くしていた
視界が霞んで見える
そこへ
ススー……
「Hey幸村、今日も派手にpartyとい……幸村?」
「ぅ゛ッ……っ…ぃ、たい…」
「幸村?どうした
いつもみたいに俺を殺しに来いよ
Ah?それともとうとうその気になったか??」
政宗の挑発に誘われてか
幸村はギロリと睨むと、ゆらりと立ち上がってフラフラ覚束無い足取りで政宗の方へ歩いて行く
「……つ、ぃ」
「…アンタ、様子がおかしくねぇか?」
「…ついッ…ぁ、つ……」
まるで魘されているような、寧ろ魘されていた
フラフラと政宗に向かっていた足は一歩手前で膝をつき、幸村の身体がグラリと芯を失う
「幸村ッ?!!」
「ハァ…ぁ、ッハァ……お館、様ッ…さす、け…!!」
「Shit!熱出してんじゃねぇか!!
俺の名前は呼びやがらねぇしな…躾直しだな、真田幸村」
ニヤリと笑うがそれもほどほどに、侍女を呼ぶと着替えと湯と拭くもの、薬を用意させた
「弱ってるアンタもそそるぜ?幸村……」
唇に軽くキスを落としてやっても譫言で信玄や佐助を呼ぶ以外に何も言葉は出てこない
政宗はそれに溜め息をつく
やはり躾がまだ必要だ
と、思いきや
「さ…す、け…おや、か…た様ぁ……さす…………まさむ、ね殿ッ……」
「Ah?」
不意打ちだった
まさか譫言とはいえ自分の名前が呼ばれるなどと
あんなに憎まれていたのだから、幸村の心の隅にすら置いては貰えていないとおもっていたのに
「surpriseか…まぁ寝言だからな
寝言でくらい……」
何と無く、この距離が切なくなる
自分で空けた一生埋まることのない距離が
「ま…ね、殿ッ……な…で、なんッ…でぇ…ッ!!」
「あン時の夢でも見てんのか…」
あの時、政宗が信玄と佐助を手にかけて幸村を手に入れた時のこと
米沢城で目を覚ました幸村は「何故だ」「何で」「どうして」と叫び続けた
無理矢理に犯され暴かれても声が枯れようと
「ぅう…は、ァ……はあ…てたのに…」
「……Ah?」
微かに聞こえた言葉
「した…ぃ、してッ…たのに…!!」
「幸む…ら……Lieッ…嘘だ、嘘だろ…?」
政宗は聞き取ったその言葉に絶句して、そしてこの現状に絶望した
嗚呼、死んだ人間が生き返るならば
時間が巻き戻せたならばこの言葉がどんなに嬉しかったことか
「お慕いッ…して、た…のに……何でぇ…ッ!ま……さ宗、ど…」
「嘘だ…嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ!!!」
今は意味のない言葉でしかない

"幸村が俺のことを好きだった?好敵手としてだけではなく?ならなんだ、どうせ叶わぬならと俺がやったことは全て無駄で
俺は――――――"

取り返しのつかないことをしてしまった?

叫んだ
ただただ天井に向かって狂ったように
全てが最初から無駄だった
寧ろ関係を壊す結果となってしまったのだ
やり直せるものならやり直したかった
「…さ、ね…殿……?」
小さな声は発狂する政宗には届かない
幸村はゆっくりと開いた目を政宗の方へ傾けた
二人もの大事な人を葬った憎むべき竜……竜は手で顔を覆い泣いていた
「あ゛ぁッ……!!んなっ…そんなッ…!!!!」
「何故…貴様が泣く……」
熱に火照った身体が熱かった
その為か落ちてくる政宗の滴が異常に冷たく感じた
まるで死にたいとでも言いたげに
「俺は…俺はただッ…何でっ…何でなんだよォォォォ…!!!」
「…何が貴様をそこまで嘆かせる?
某をこのようにまでしてまだ足りぬか」
「違うッ…違う違う違う違う違う!!
俺がしたかったのは!ただ俺は!」
「天下を手に入れるために、俺の大切な人を二人も奪った
ただそれだけにござる
それ以外に何が?」
幸村の目は冷たかった
彼からあの言葉を聞ける日は一生待っても来ることはない
もう、後には引き返せなかった
「……ふふ……は、あはははははッ!!!
Haッ、竜が笑えて涙すら出てくるぜ!!!」
「何?」
「アンタはあの二人を殺した俺を一生憎む、そうだろ?」
「…ああ、」
「なら話は早ぇ」
「…?ッ!!
何しッ…」
袴に手を突っ込まれて尻のラインにかけ撫でられ、つぷりと指が入ってくる
最早慣れて快楽も敏感に拾うようになっていたそこはするりと政宗の指一本を通した
「ひっ…ぁ゛、」
「あとは
崩れるところまで崩すだけだ」
見下ろしてくる歪んだ隻眼は嘆いていたのか

又は………





END
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