銀魂

□待ちわびて約一ヶ月
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約一ヶ月前……
『銀ちゃーん』
『あ?』
『これあげるアル、どうせ1つも貰ってないんだロ?』
そう言ってすっと銀時に突き出された神楽の手には、可愛らしいラッピングのされたチョコだった
『素直じゃねぇなぁ、俺に渡したいんならそう言えや』
『私はただ情けをかけただけアル、いらないんなら自分で食べるネ』
『まてまてまて!!!別に銀さんは貰わないなんて言ってないからね?!どうしてもってんなら貰……』
『欲しいって言えヨ
チョコ1つも(お妙の可哀想なチョコは除く)貰ってないくせに』
『……くださいっ』
料理が得意なわけではなく、新八に教わって一生懸命作った大好きな銀時へのチョコレート
彼が甘いものを好きなのを神楽は知っていたから物凄く甘くした
『ホワイトデー楽しみにしてろよ、お前より美味ぇチョコ作ってやるからな』
『期待しないで待つアル』
期待はしまくりだ、なんたって大好きな銀時から手作りのチョコが貰える…これほどに嬉しいことがあろうか?
そうやって顔には見せなかったが、神楽はホワイトデーを指折り数えて待った



そして3月14日、ホワイトデーの日


神楽は、一人拗ねて押し入れに籠っていた
定春の散歩に出ている間に銀時が仕事と称して出掛けてしまったのだ、帰るのが明日の朝だとか
あれほど楽しみにしていたホワイトデー、理由を知らない新八は今までの神楽の機嫌の良さが一変したので何とか宥めようと必死だった
「神楽ちゃん、ずっと押し入れに籠ってるの良くないよ、外に出よう?」
「黙るヨロシ、お前に何がわかるんだヨありがち地味キャラ」
「いや、酷くない?!!僕ただ外に出ようって言っただけだよね?!!」
「お前の存在自体が疎ましいアル、つーか地味キャラのくせしてでしゃばってんなヨ」
グサグサと言葉の矢が突き刺さり新八は瀕死寸前、『何でこんなに機嫌悪い神楽ちゃん置いてったんですか銀さんッ………!!』と心の中で毒吐く
暫く粘ったのだが、神楽は出てくる気配を見せず
新八も買い物をしに行かなければならなかったので
「買い物に行ってくるけど、お昼ご飯はそこに置いとくから」
出てきたくなったら食べてね、そう言い置いて新八は出掛けた
それを聞いていたのかいないのか、神楽は押し入れの自分の布団の上で丸くなり、襖に背を向けて今にも泣き出しそうな顔をしていた
「馬鹿アルか……銀ちゃん、」
あんなに楽しみにしていたのに銀時のいないホワイトデー…ぽろりと涙が一滴、布団に落ちて丸いシミを作った

ガララッ

引き戸の開く音がした
新八は先程出掛けたばかりだ、まぁ大方忘れ物でもしたのだろう、と神楽は気にしないことにしたのだが

ススーッ

「みーっけ、」
押し入れに光が射し込んで、バッと起き上がり開け放たれた襖の方を見ると、そこにはいない筈の銀時がいた
「銀…ちゃ、?!」
「おぃおぃ何だよその顔、目元真っ赤じゃねぇか」
そう言って神楽の涙を舐めとり頭をくしゃ、と撫で微笑む
「ほら、これやるから泣き止め」
ぽんっと目の前の置かれたのは"神楽へ"と書かれた、ピンクのリボンで丁寧に結ばれた箱
それを手に取り中身を見てみると、ケーキが2つ、並べられて入っていた
「ガトーショコラ何だけど食えるか?」
「…好きアル」
「ん?」
「銀ちゃんの作ったものなら全部好きアルヨ!!」
ぴょーんっと飛び付いた神楽を受け止めきれず、後ずさった銀時はテーブルに足がつっかえ

ガッスァァァァァァンッ

「っガァァァ……!!!」
「あ、御免ネ」
「他人事だと思いやがってぇ…!!!」
「それより仕事どうしたアルか?まさかボイコットしてきたアルか!!お母さんそんな風に育てた覚えはありませんっ!!」
「お前俺のお母さんじゃねぇし!!…お前が拗ねてるだろうと思って帰ってきたんだよ」
「別に拗ねてないアル」
「過去進行形で拗ねてただろーが」
「拗ねてないって言ってんだろーがヨ、それよりこのケーキ一緒に食べるアルよ!」
「はぁ?お前、ソレ全部食って良いんだぞ?」
「銀ちゃんと食べた方がおいしいアル、新八帰ってくる前に食べるネ」
にっこり笑う神楽に根気負けした銀時は「紅茶あるから出してくる」と台所へ向かった


ガトーショコラは銀時チョイスで殺人的な甘さだったとかそうでなかったとか…





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