戦国BASARA

□貴方との不安
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貴方はもういないのだ

会えない、絶対に

俺が貴方を

だから
俺は―――――――






夜空には星が輝き
草原には虫が鳴いていた
だが、そこには啜り泣くような声も混じり聴こえてくる
哀しげで、

『もう一生会えない愛しい人』

その彼への嘆きと昔の自分への悔やみ
妬み、恨み、苦しみ
それらが混じりに交ざり草原の虫の大合唱の中、啜り泣く少年の座り込んでいる側だけ虫は鳴くのをやめていた
「ぅッ…っ………く、」
拭っても拭っても零れる涙はどれだけ流し続けてきたのだろう…少年はこうして彼を労り、そして自分の罪に涙を流し続ける
風が草の先端をサラサラと撫でるようにそよぎ
少年の長い後ろ髪が草と一緒に靡く

その昔、確かに彼と少年は一緒にいた
この戦場に
そしていつの間にか少年一人だけ
彼の命を手の内の槍で一突きにしたのは紛れもなく

"俺がッ……俺が俺が俺がァッ!!!
好きと共に尊敬していた、貴方を殺したのは俺だ……"
会いたい
彼に会ってあの隻眼で自分を見据えて欲しい
あの綺麗な瞳で……
あの日を取り戻したい
だがそれは一生叶わない
そうしたのは自分だから
サラサラ擦れる葉の音はサクサクシャラシャラという音に変わり、来客の存在を言葉無く少年に伝えた
「……ぐすっ…ッ…さ…ね……殿…!!」
「AhーHan?呼んだか、幸村」
「……?」
少年に
座り込む幸村の耳元に届く声
ここに人は滅多に来ない
ましてや夜にだなんて
懐かしい声は徐々に近付いてきた
「誰……」
「俺のNameを呼んどいて誰、だぁ?Haッ!アンタが涙を流してた根源…って言えばわかるか?」
涙の根源、それは自分の生まれた時代と後悔
後悔の理由とは?愛しい彼をこの手で殺せざるを得なかったから
その彼の名は……
「政宗…殿?」
「Right answer. 正解だ」
「あぁッ…ぁ…!!!政宗殿ッ!!政宗殿で…本当に……!?」
ぽろぽろと零れ落ちる滴は最早止まらない
止められない
立ち上がって彼を見れば昔より変わらぬ顔
あの瞳
ずっと…ずっとそれを見たかった
その姿をずっと…探していた
「そんなに泣くなよ
寂しかったのか?」
「政宗殿……会いたかった、ずっと、待っておりました……」
ぎゅうと政宗を抱き締めると彼の心地好い手が髪を透いて柔らかく頭を撫でてくる
暖かい
この温もりがどれだけ恋しかったことか
「なぁ幸村、アンタの居場所はここじゃねぇだろ?
戻れ、そしてまた会おう
必ずだ
約束する」
「貴方がそう申されるならば……」
幸村はそう言い残すとその場からすぅとその姿を消した
草原に残るのは政宗と虫達
そして夜空の星だけ
「アンタの居場所はここじゃねぇ…ここは俺達が別れた場所だ
会う場所じゃねぇ」
"本物のアンタ"がいる場所じゃねぇ
呟くと政宗は草原を静かに一人歩いていった

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