戦国BASARA
□いつまでも子供のままで
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さすけは温かいな…母のようだ
そんな恐れ多いですよ
決めたっ!
?
今日からさすけはそれがしの母だ!
…弁丸様、俺は飽く迄も貴方の――‐‐‐
『貴方の忍でしかいられないよ』
にこりと愛想笑いを浮かべた佐助の顔。当時は幼く、その表情に疑いもなくとりあえず笑い返した幸村も今思い出せばあの表情の裏に何があったのか…わからないわけでもなく縁側より見える庭をボーッと見詰めていた。
母はいない。父も討死した、幸村から見てもそれは勇ましい死に方と言えよう。
だが親がいなくて寂しくないと言ったら嘘になるのではあるまいか?
"修行が足らぬな
乱戦の世にて血の繋がりはあってないようなもの…"
はぁ…とため息が洩れる。
「あれ?どしちゃったの旦那
もしかして色恋の悩みですか」
ひょっこり佐助の顔が覗く。少しギョッとしたがそういえば、幸村は佐助に膝枕をしてもらっていたのだった。
忍の膝は硬い、だがこの膝こそ幸村が長年頭の下に敷いてきた感触。
「何でもない、眠りかけていただけだ」
「そりゃ悪いことしちゃったね」
ふぁさり、と茶ッ毛の頭が撫でられる。
「悪いことはない
俺が寝てしまっては"母の日"にはならぬであろう?」
「はは、そうだね」
母の日、異国文化で母親に今日までの勤めや苦労を感謝する日らしい。それをいつぞやに政宗から聞いた幸村はこの日を楽しみにしていた。
佐助は普段労ろうにも如何せん、本人の忍のそれがよしとしないのだろう。幸村自身仕事をやらせているのだし佐助もそれで食っているのだから仕方のないことなのだが……。
どうにかして佐助を労り、そして己の母として感謝したい。何か望むのであればしてやりたい。
母の日という名目を盾にして、それでもやっと佐助の口を割らせたのだが……
『じゃあ、』
ポンポン、と叩かれたのが膝。幸村が首を捻れば「膝枕」とにこりと笑われた。
そして今こうして、幸村は"いつも通り"に膝枕をしてもらっている。そう、これは"いつでも"出来ることだ。
「佐助…」
「んー?」
「本当にこんなことでいいのか…?」
「何言ってんの
旦那が側にいることが俺の一番の幸せよ?」
「休みなどはいらぬのか?最近は任務に出しすぎた、疲れておるだろう」
「俺が休んじゃったら旦那のことは誰が面倒見んのさ」
言われてみればそうだ、が
「大抵のことなら自分で出来る!」
ふんっと鼻をならして得意満面顔を見せる幸村。それに多少呆れを感じつつも佐助が「じゃあ何ができるの?」と聞けば
「皿を割らずに洗えるようになったぞ!あと洗濯物も破かず………佐助?どうした具合でも悪いのかッ?!!」
「うん…なんか、ねぇ…?ごめんね旦那、俺様働きすぎちゃったみたい」
基準値を至極下回る回答を意気込んで言われてしまってはもう何も言えまい。佐助は自分が何でもやってあげすぎたことに対して少しの後悔とかなりの反省をしていた。
幸村はといえば今の言葉を『働きすぎて具合が悪い』ととったのかがばっと起き上がる。
「うわっ何?!」
「無理はするな佐助ッ!」
「は?別にしてませんけど…」
佐助は顔をしかめ首を傾けるが幸村はそんな筈はないと佐助に迫る。
「疲れているのであれば申してもよいのだぞっ?!そなたはいつも真田のため働いてくれているのだからな!!」
休みたいならそう言え!遠慮はいらぬ!!!
しつこく言ってくる幸村に苛立ちが募る。正直なところその苛立ちは先程から感じてはいたのだ。
別にしつこさからではないが…それが今、爆発した。
「な?!佐助、少し休…」
「旦那」
「佐助……?」
明らかに変わった、しかも怒気を含む声質に"自分は何か佐助の気に障ることをしただろうか"とまず、わけのわからない怒気に腹をたてるより先に佐助の機嫌の理由を考える。腹をたてるのはその後だ。
順番が違うような気もしなくもないがこれが真田幸村流、人との交流方である。
機嫌優れぬ佐助は少し怒ったような顔で幸村を見る。
「休め休めって…そんなに俺が邪魔?」
「っそんなことは!ただ俺は佐助が無理をしているのではないかと……こういう日でも無ければお主は休まぬであろうッ?!!」
「無理も何もその仕事をさせてんのはアンタでしょーが
働かなきゃ食ってけないし第一忍に休みなんて必要ないよ」
この話は少し卑怯だっただろうか…佐助は口に出した後に後悔する。
案の定、何も言い返せなくなってしまった幸村は顔を伏せ…結果、泣かせてしまった。