戦国BASARA
□いらんことはしない!
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「―‐‐…、てことだ
この件は向こうにそう伝えておいてくれ」
「は、因みに此方の方は…」
向かい合う政宗と小十郎
足を崩して座っている政宗に対しきっちりと正座している小十郎は一枚の紙を政宗に手渡そうとその場から立ち上がった、が
ずだだだだだだだ
すっぱぁぁんっ
「政宗殿ぉぉぉっ!お久し振りにございまするぁあぁああ!!」
「Wao!Hello幸村!!
はるばる奥州までご苦労だったな!疲れてんなら休んでいいんだぜ?!」
「休む時間も惜しい!
手合わせを願いに参った!」
「O-K!!あんたはそうでなくっちゃな!野暮はなしだぜ幸村ぁっ!!
It's showtime!!Ya-ッha!」
「たぎるぅぁあぁぁああぁあああ!!!!!」
ずだだだだだだだ
「………」
一人、立ち上がる体制のままフリーズで置いていかれた彼の心境…
"……。
嵐が去った、か"
多分、誰にでも察せるであろう
さて、政宗が客人の幸村と手合わせに飛び出しすることが無くなってしまった小十郎は暫く考えた後、自室へと戻ることにした
持ち出そうとした話は別段今日までという程重要な物ではない
しかも最近はずっと政務続きだった政宗、今ここで幸村との手合わせを止めれば政宗は確実にぶちギレる
側近長年の勘…というよりは推測である
政務室を出て幾つか角を曲がりあとは一直線に進むだけ
真っ直ぐ歩いていて気付いたのだが、一ヶ所だけ木屑が散らばっているところがある
しかもそれは小十郎の部屋付近……
"刺客でも来たのか?"
それとも今まさにいるのだろうか…にしたって随分と大胆な刺客である
一応警戒しながらきしきしと自分の部屋へ近付き、突き破られたように破壊された障子の穴からそろ〜っと室内を見てみると、刺客がぶっ倒れていた
否、彼は刺客などではない
よって『障子を突き破ったもの』として扱うのが正しいかもしれない
「………一応聞く、何してんだ」
眉間に皺を寄せながら死体ヨロシクにぶっ倒れている彼に話し掛けるとその状態のままぴくりとも動かず
「…………見ての通り、力尽きてんの」
「どんな経緯だ」
死体(仮)はすっと障子の向こうを指差した
「えいさぁっ!!って旦那に放り込まれた」
「そりゃあ…ご苦労だったな」
「背骨がね、ゴリッて
しかも額当てしたまんま」
忍の彼がこの状態ということは相当に強く放り投げられ、相当に痛かったのだろう
未だ動こうとはしない死体(仮)…というか佐助に小十郎は大丈夫か、と聞いてみるが大丈夫なら顔くらいは上げているだろう
「…大丈夫に見えますか」
「いや、」
全く見えない
「あ゛ぁ゛〜…痛い」
「お前が口に出すなんざ珍しいな」
「見た目以上に痛いんだよ…一回放り投げられみなって
そんで柱に背骨強打して額当てした顔面に畳ぶつけてみなって
すっ…………ごい痛いから」
「…………」
そうなった自分を想像して断った、考えただけでも痛々しい
佐助はもう暫く動きそうもない、居て悪いわけでもないので小十郎は何を言うでもなくとりあえずは破壊された障子の回収にあたった
障子回収、及び取り替え終了
ふぅ…と一息ついてそういえば佐助が来ていたのだと思い出した
佐助がいた場所に目を写せば、いない
「…?」
何処に行ったのかとキョロキョロ見渡すがいない
「猿飛?」
「あー、ごめんごめん」
廊下から声が聞こえてきて顔を出せばお茶を運んでくる佐助がいた
「ご苦労様〜、障子ごめんねぇ」
「別にいいが…お前は大丈夫なのか?」
「うんまぁ
ほぼ回復?」
「ほぼ?」
「額当てで顔引っ掻いたらしくてさぁ、ほらここ」
ちょいちょいと指された左目の端辺りに赤い線が見えた
「目にいかなくてよかったな」
「冗談にならないよ…」
なくもなかったであろう話に佐助は苦笑しか出来ない
ズズ…と茶を啜ったところで小十郎はふとあることに疑問を抱いた
「真田は俺達の関係を知っているのか?」
関係、この二人は所謂恋仲なわけだがそれは二人だけの知るところであり政宗や幸村、その他周りの人間は知らない筈だった
二人の間でも周りには悟られないようにと気を配っているつもりである
だが今回佐助は幸村に小十郎の部屋へとぶん投げられた
それはつまり、幸村は小十郎と佐助の関係を知っていると言うことではなかろうか?
そこまで考える余裕が無かったのか佐助はあ、と声を漏らして目を見開く
「そう…だよねぇ」
「わからねぇのか?」
「特に何も聞かれたことはないし……大丈夫だとは思うんだけど」
「なら何で俺の部屋に投げ込まれたんだ」
「俺に聞かれてもねぇ…
然り気無く聞いてみる?」
首を傾げる佐助
小十郎としては確認しておきたいところだが逆に勘づかれる恐れがある
それだけは避けたい
「片倉の旦那、」
「あ?」
「俺様、忍なんですけど」
「………ああ、そうだったな」
「もしかして忘れてたッ?!!
酷くない?!」
酷くない、何故なら佐助が忍らしからぬ性格だからだ
悪びれた素振りも見せない小十郎の態度にイラッときた佐助は己が本能のままに小十郎の腕を比較的強めに叩く
頭を叩かなかったのは何と無く身の危険を感じたからだ
「………」
「何、」
直視してくる小十郎に少々嫌な予感がした佐助は直ぐ立てるよう何気無く片足をあげる
「……俺の前だとガキに見えるな」
「うっせぇよ余計なお世話だッ!!!」
グーで殴ろうとしたら捕まって喰われました。