戦国BASARA

□クリスマスにバイトっておま…
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カタコトと延々品物を並べ続けるのは苦ではない。寧ろコンビニというのは客が暑くもなく寒くもない環境を常に造り出しているので、店員としてはちょっとしたオアシスだった。
ただ、1つ。

「………」

「……なんでござるか」

「…何でも」

「…………」

「……あんたこそ何だよ?」

「…別に何も……」

視線が痛々しい。
理由も意味も、自分にすら見付からない視線。
こんなことをして何になるのだと、幸村はまた棚を見ては足りない商品を足していくが、"ちくり"と刺さった視線に次は睨みを返してやった。

「さっきから何でござるか
営業妨害にござる」

「Oh、あんたまだそんな目出来んのか」

「…ふざけているので?」

「いや、ただ変わったなってな」

「……」

下を俯く幸村に政宗は「ん?」と首をかしげる。

"はて、俺は今この柴犬の耳を垂らすようなことを言っただろうか?"

そうして不安になったのだ。

"彼はもう俺の事など心中に無いのではないか"

はるか昔のことなど既に走馬灯の如く過ぎ去って、速さに砕けて散々に消え去ってしまったのではないかと

「…なぁ、幸村」

「はい?」

「この後、暇か?」


「………はい、」

「どっか行かね?」

政宗の言葉に幸村は一瞬ぽけりと手の内にあった補充のボールペンを取り落とし、慌ててそれを棒にかけた。

「そ…某はいいですが、政宗殿は?」

「俺?What?
どういうことだ」

「貴方には大切な人がいるのでは、と問うているのです」

前に言ったではないか。
彼の言葉で『いないわけじゃない』と、その真意はこの後会う人ではないのですか。
真顔で言ったから政宗には多少怖く写ったかも知れないが、それ以上に幸村も怖かった。

「…それ、お前」

「…………へ?」

「いやだから、お前、幸村、お前自身
you are」

間抜けな声が店内に響いて、後からすれば客がいなくてよかったと心底思ったことよ。
政宗は開いた手を幸村に差し出す形で幸村を示した。

「某、とは…」

「おいおい、後ろを見るなよ
あんただあんた
正真正銘、真田幸村あんただぜ?」

「何故?」

「何故って…約束したじゃねぇか、『あんた以外は受け入れねぇ』って」

「あぁ…そう言われれば」

そんな約束をしたことがあったかもしれない。幼い童のように小指を絡めて、

「そう言われればって忘れてたのか?」

「そんな顔をされるのは心外です。記憶にあることすら偉業の技でござるぞ」

むぅと頬を膨らませれば、貴方は前のようにカラカラと笑ってくれました。

カラカラと笑えばお前は微笑み返してくれるのです。

「見付からなくても約束守っときゃいいかなって思ってたんだけどよ」

「某には探す意欲すらありませんでしたな
何より貴方でない貴方を見てしまうのが怖かった」

俺じゃない俺?と復唱すると、コクリと静かに頷かれる。

「だって
ここは刀も槍も、戦も無ければ身分もない
会ったとしても貴方ではないのではないか、それが恐ろしくてなりませんでした」

「そりゃあ俺も同じだ
槍持って俺に突っ走ってきて…吠えて暴れるあんた以外、俺には想像できなかった
でもよ、案外普通なもんじゃねぇか」

どちらも普通の高校生。
ただのバイト店員。
何のへんてつもないしがない学生にしか見えない。

〜〜‐―〜♪

ほら、入店音が響けば。

「「いらっしゃいませ」」

職業病一歩手前の言葉だって自然と出てきてしまうのだから。

『じゃあ、後で』

『後で、』

『先に帰んなよ?』

『そんなこと致しますまい』


END



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