04/05の日記
02:19
淡い期待抱いてみた<佐助&政宗兄弟/死ネタ/現BASAver.
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懺悔してもしきれない事がある。
謝っても謝りきれない事がある。
後悔ってしても遅いって事に気付かせるためにあるんだ。
「おーい、薬の時間だよー」
カゴを揺すってもペットのハムスターはピクリとも動かなかった。
暑い時のスタイルのように腹を見せて、自分並にでっかく成長なされた腫瘍を抱えるようにして動かない。
「おーい
ひまわりいらないの?」
尚も佐助は語りかけた。寝床からはみ出ている足をちょいちょいとつつくも動かない。強制起床にキィ、とキレることもない。
ヒーターのある寝床にいるそれは、まだ少し温かかった。
「もー・・・
俺様学校あるから取り敢えず行くからね
帰ったら薬あげっから」
弟の政宗はカゴの近くにあるソファでゲームをやりながら、その様子を奇怪そうに眺めていた。
一応理解はしていた。
ちょっとした期待だ。
数時間、温まりながらホカホカしていればまた鳴いてくれるのでは。デカイ腫瘍を引き摺りながらも寝床から這い出して、お気にのひまわりの種を柵をかじり催促してくるのではないか。
起こり得ない期待を破られて、帰宅早々、涼しい場に置かれていたカゴに向かって泣いた。
佐助自身驚く程に泣いた。
ごめんね、
俺様現状維持派でさ、
最初病院行った時に手術しちゃえばよかったね
そうすりゃさ、
もっと長く一緒にいられたかもしれねぇのに
昨日手術の日取りを決めた。
明後日に予約を取れた。あと2日だったのに。あと2日だけ持ちこたえられればそんな邪魔なもの、取っ払ってもっと長く一緒にいることだって出来たのに。
「ねぇ、2日だよ?
アンタさぁ鉄製のケージ10分くらい噛むねちっこさがあるんだからそんくらい粘れよ」
自分でもかなり横暴だと思う。最初の手術を断念したのは自分だ。
5頭に1頭は帰らない、と聞かされて逃げ出した。
なんとなく瓶詰めのひまわりの種をケージの中にいれてその前に座る。
「まだ袋に半分もあるんだよ?
あとゼリー、アンタ昨日食ってたよね?5つくらい残ってるし器ん中にもまだ全然あるじゃん
昨日掃除したのそんなに気に入らなかった?
だってさー、父さんが一週間おきにやれって五月蝿いんだもん」
相当一人で喋っていた気がする。
2時に家へ帰ってきた筈が政宗が帰ってきて気付けば4時だった。
「お帰り」
「Ah、ただいま」
帰ってきた時にいなかったと思ったら友人と遊んでいたらしい。帰ってくるなりソファへドサリと座り込み鞄からゲームを取り出す。
「佐助、お前朝に気付いてたんだろ」
「うん〜・・まぁ、ね
何と無く帰って来たら動いてるんじゃねぇかなって」
「Haッ らしくねぇな」
「だよねぇ
これアンタが動かしといてくれたの?」
「Mamに言われて動かした」
「そっか
ありがとう」
「お前が素直だと気持ち悪いな」
カラカラと笑う政宗に佐助は「何それ、遠回しに殺してくださいって言ってんの?」とから笑いを返す。何でか、気が落ちている時程に人は笑えるものだ。
流石にいつまでも続く事はなく、暫くお互いに沈黙状態になる。
一旦静かになったわけだが二人とも普段静かなわけでもなく、どちらかというと忙しないタイプ。先に我慢が切れたのは政宗だった。
「佐助、」
「ん?」
「家の裏に埋めんだよな」
「うん、父さん帰って来たらね」
ペット(昆虫から魚類動物まで)を家の裏に埋めるのは恒例である。先代ハムスターからメダカ、果てにはカブトムシまで何気に幅広く手を出していた。
「OK草むしってくる」
「別にそこまでしなくていいでしょ」
「Bad、なら見てみろよ?
裏手すげぇ茂ってるぜ」
「そんなに?」
試しに二人で外に出て家の裏を見ると、生命力溢れるタンポポが地面の茶色を余す事なく占領していた。立派な蕾をつけているのまであって、引っこ抜くことに気が引ける・・・・のはどうやら佐助だけのようだった。
ブチッ ブチッ ブチブチブチッ
ポイッ←ダンゴムシ
「ちょ、アンタタンポポに何の恨みがあんのさ」
「Ha?雑草は雑草だろ」
「片倉の旦那みたいなこと言うねぇ・・」
"片倉の旦那"とは佐助の友人である片倉小十郎のことだ。政宗と妙に気が合い、最近では小十郎の持つ畑の手伝いをしているらしい。
挙句地中に巣食うダンゴムシすら道路へと放り投げられる。この男、確実に呪われるだろう(ダンゴムシに)。
「触れんのか」
「うん」
「克服したのか?」
「ううん、ダメだけど
最期まで面倒見てこそ主だろ?」
佐助は死んだものは何に限らず触れることが出来なかった。何が怖いんだが本人にすらさっぱりなのだが兎に角ダメなのだ。が、今回はそうも言っていられない。
「あ、俺様風呂入るわ」
「手伝えよ」
「母さん今夜帰り遅いだろ?
晩飯俺が作る事になってるんだよ」
それともアンタが作る?という問いに対して政宗は無言に草むしりする事で返した。政宗は重度のゲーマーであり指の動きこそ素晴らしいが、料理などになるとその繊細さは何処へやら、とてつもなく不器用だ。
「じゃあヨロシクね
そんなにやらなくていいから、気が済んだら家入りなよ?」
「OKOK、気にすんな」
さっさと行けとばかりに手が振られる。苦笑した佐助はありがとう、と言い残すと家へ入って行った。
佐助が行った後も暫く草をむしり続けていた政宗。単調な作業ほど没頭するタイプらしい。自分でも新しい発見だ。
"大丈夫かあいつ"
あいつ、とは勿論佐助のことだ。
普段とてつも仲が悪い分、今日のあの素直さは逆に心配になる。
朝の寸劇もそうだが、政宗が帰ってくる前にはどうやら泣いていたらしく、目に微かだがあとが見えた。
手を震わせながら触れているのも垣間見た。
腐っても自分の兄だ。相当無理しているのはわかる。
"今日くらいは喧嘩は無しにしてやるか・・"
別に元々狙ってるわけでもないが。
更地と化した土に穴を掘りながら何と無く思った。
ザクッ ザクッ ザカァンッ
「は、」
この後、土に埋まる何の用途の為にあるのかパイプに数回ぶつかり、6回ほど掘り直した。
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