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□タランテラ
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速いテンポに明るいのにどこか狂ったような音が、大学の音楽室から聞こえてくる。
はて、どうして医学部のはずのあいつがここにいるのだろう。
ゆっくりと扉を開け、俺は室内へと入った。
「あ、留三郎」
今まで鍵盤を叩いていた細い指が演奏をやめたせいで、散らばっていた音はプツリとやんで、ただ静かになってしまった。
「何で教育学部でピアノ弾いてんだお前…」
「うん、ちょっとね」
ヘラっと笑ったコイツの眉間には若干シワがよっていた。
絶対こいつなんか有ったな、と俺は確信した。