TexT;ぬらり(その他)

□夜の訪問者
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それは深夜、前触れもなくやってきた。


自室で本を読んでいた竜二。傍らには魔魅流。
なんてことはない日常。

竜二はふと目を上げて、時刻を確認した。
何の気無し、そのまま本に視線を戻す。
と、視界の隅でなにかが動いた。
目を向ける。

「…うわ!」
声を上げた竜二に、魔魅流が反応した。
「なに、竜二」
「そこ、壁んとこ、出た!」
「?……ああ、ゴキブ」
「言うな!!」

「魔魅流、何とかしろ!」
「竜二の部屋だよ」
「お前もいるならヤレ!」
えー、と呟きながら魔魅流は、そこらの本を手にとる。
「待てテメエ、人の本勝手に使うな!」
えー、と今度ははっきりと溜め息が聞こえた。

「どうすんの、止めていい?」
「止めてみろ、金輪際お前とは口聞かねえぞ、絶交だ」
まるで立場を逆にした、子供じみた脅迫に微笑むヒマもなく、竜二がまたぎゃあと言う。
「こっち来る!魔魅流、いいからそのへんの新聞使え!」

渋々紙の束を丸め、黒い物体に狙いを定める。
じりじりと間合いを詰めると、感じ取ったか、向こうも少しずつ動き始める。
紙を振り上げ、一瞬止まった隙を目掛けて叩きつける。
バシン!

「「ぎゃー!!」」
声は二人分だった。
魔魅流の狙いは僅かに逸れ、危機を察知した黒い悪魔は最終手段に出た。
つまり、
空を飛んだのだ。
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