TexT;ぬらり(その他)

□夜の訪問者
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「こここっち来んなあ!」
パニックの様相を呈した竜二が、竹筒を握りしめた。
必死の願いも虚しく、悪魔は再び宙ヘ羽ばたく。
「「ぎゃー!!」」
魔魅流と竜二は、思わずひしと抱き合った。
ちょっぴり涙目。

「何とかしろよ、魔魅流!」
「竜二こそ式神で」
「馬鹿、あんなのに式なんか使えるか!お前デカイんだからやれよ!」
うるさく喚いていると、部屋の戸が開く。


「どしたん竜二、深夜やで」
「秀元!よし、テメエでいい、あれを殺れ」
「虫?」
ずかずかと近寄る秀元に、物体は素早い走りを見せる。
「…あ、ボクあかんわ、霊体やからできひん」
「嘘つけ!」
くるりと回れ右する式神に、竜二は怒鳴った。

「何お兄ちゃん、うるさいわあ…」
目を擦りながら現れたのは女子中学生。
「ゆらちゃん、竜二が虫怖いんやてー」
「てめっ」

ようやく開いた目で確認したゆらは、笑った。
「え、こんなんにビビってんの?うわあ意外やわー」
「そんならやってみろ!」
パシン。
履いていたスリッパを無造作に振ったゆらは、見事に仕留める。

「どや?」
自慢げに(小さな)胸を張る妹に、感嘆の眼差しが集まった。
「すごいでゆらちゃん、怖ないん?」
秀元がぱちぱちと手を叩く。
「私だってナメクジとかはイヤや、乾きモノは平気やけどな!」

(…乾きモノ…)
げんなりする男性陣の中で、ひとり竜二は(ナメクジ)と心の手帳に書き付けていた。
妹の弱点なら、何はさておき把握。
それが竜二クオリティ。


さて後日、秋房に一部始終を語ろうとしたゆらが、ナメクジ攻撃に遭ったかは、また別の話。





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