TexT;ぬらり(その他)

□禁じられた遊び
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薄暗い廊下を、滑るように秀元が進んでゆく。
生身とはいうものの、人ならざる身、足音も立たなかった。
離れの一角、静まりかえった部屋の一つを迷わず開ける。

ちいさな明かりだけが灯された部屋、畳の中央に敷かれた布団。
布団の横、枕元に正座しているのは、竜二。
白い夜着を纏った彼は、秀元を認めると、静かに畳に手をついた。



花開院の一族でも、主だった者たちだけが集められた会合。
そこで、秀元は言った。
人の精気が必要だと。

式神として召喚されても、生身の身体と魂を維持するのは、大変な霊力を要する。
術者の精神力だけに頼るのは負担が大きすぎ、いざという時の備えも必要だ。
できれば術者に近い者の精気を摂取すれば、ある程度は持ちこたえられる…。

視線はいつしか一人に集まった。
臆することなく受け止めた竜二は、ではオレが立つ、と応えた。



「竜二、すまんな」
あまり悪いとは思っていないような表情で、秀元がうそぶく。
「今、花開院の命運はお前にかかってる。言われれば、従うまでだ」
淡々と答える竜二にも、感情の色は見られない。

「ゆらちゃんは、さんざん迷ってたけどな」
ゆらは最後まで渋ったが、竜二が押し通した。
妹の身を案じてなどとは決して言わないが、退かない兄に、ゆらが折れた形となった。

「…御託はいい、さっさと済ませろ」
会話に焦れたのか、投げ遣りな口調になった竜二に、秀元は笑みを浮かべる。
「では、遠慮なく」

そういう会話が交わされたのは、いつだったか。
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