TexT;ぬらり(その他)

□お化けかぼちゃに栗一粒
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「何だメガネ」
「眼鏡呼ばわりは止めてもらおうか、Trick or Treat!」
声も高らかに登場したのは黒いシルクハットにマントを羽織った雅次…左手に袋。

「ハロウィンつってもここに菓子なんかねえよ、余所当たれ」
「竜二の前」
「あー?」
竜二の前、小皿に載った栗、一粒。
「お前っ…、これはやらねーぞ!」
「Trick or Treat」
「く…っ」
睨み合うこと十数秒。
「…好きにしやがれ!」
吐き捨てて、竜二は栗を自らの口に放り込んだ。


「いい覚悟だ、竜二」
「うるせえ変態メガネ」
せっかくの味見を邪魔しやがって、と文句を言う竜二に構わず、雅次は持参した袋を開く。
「それではこれを」
「…んだコレ!」
見守る魔魅流がわずか姿勢を崩すのと、竜二が叫ぶのは一緒だった。
黒いワンピース一枚。長い(黒い)靴下。
「魔女っ子衣装だ(魔女っ子とか言うな、と竜二が毒づいた)。魔魅流はこっち」
渡されたのは、黒い猫耳がついたカチューシャ。

「…待て、魔魅流はそれだけか?」
「竜二は魔魅流のスカート姿が見たいのか?」
「じゃなくて!オカシイだろ何か!」
「好きにしろと言ったのは竜二、お前だ」
「ぐ…っ、覚えてろよ雅次…」
「そう睨むな、ソソるじゃないか」
「ざっけんなド変態!」
「後で証拠写真撮るからなー」
服をわしづかみに去る背中に声をかけると、返事は手荒に襖を閉める音だった。

しばしの後。
猫耳がやけに似合う魔魅流が襖を開け、なにやらもじもじしながら竜二が現れた。
「雅次、これ…短すぎだろ…」
黒いワンピースはミニスカ丈で、ニーハイソックスでも足が隠しきれていない。
「良し」
「何がだ!」
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