TexT;ぬらり(その他)

□狙いうち
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封印を確認しようと向かう道、向こうからやってきた人影に竜二は目をすがめた。
奴良リクオ。

京の闇が払われた今は、凡庸な中学生にしか見えない。
それでも竜二とすれ違う度、凡庸な中学生は生意気な台詞を吐く。
曰く、すきなのだ、と。

最初は気にもかけなかったが、毎回繰り返され、その真摯な態度に、冗談ではないらしい、とは竜二も認識した。
けれど竜二は何の返答もせず、一方的に愛の告白を受けるだけの関係が、現在も続いている。


やってくるリクオは、取り巻きの妖怪でもいるのか、笑いながら歩いてくる。
妖怪の姿は見えないが、妖気が漏れていた。
やがて竜二に気付いたリクオが、急に表情を引き締めた。
キリ、とでも形容したい変わりように、竜二はふと悪戯したくなる。
辺りはちょうど、人影もない。

(からかってやろうか)

二人の肩がすれ違うまであと数歩、先に口を開いたのは竜二だった。
「ちょっと来い」
言葉と同時、有無を言わさぬ間合いで胸倉を掴み、手近な塀に押し付ける。

眼鏡の向こうで中学生の目が丸くなっているのを覗きこみ、ニヤリと笑った竜二は、唇を相手のそれに合わせた。
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