TexT;ぬらり(その他)

□ハッピーライフ
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「なあ竜二、結婚せえへん?」
「誰と」
「僕」
ブレザーのジャケットを脱ぎ捨て、ネクタイに指をかけていた竜二は、たいそう白けた目で秀元を見た。

「そんなことより、」
「ちょっと流さんで、人のプロポーズを」
動作を再開しながら話し出すのを慌てて遮ると、また平坦な視線が向けられる。
「お前のアホ話には乗らん」
「ひどいわあ、一世一代の告白なのに」

そうは言っても、秀元に傷ついた風はない。
へらりと笑って言葉は続く。
「そうか、竜二はまだ高校生やから現実味薄いんやな。男も19になったら結婚できるて、先生から教わったやろ?」
「てめーにな」
おお、そうかとまた笑う年上の男を竜二は足で小突いた。
「下らねーこと言ってないで、早く服出せよ」

シャツのボタンをいくつか外したところで、着替えがないのに気付いたらしい。
白い襟元が肌と鎖骨、その下に息づく滑らかな胸板を中途半端に隠していた。
「皺がつくのが気になるなら、最初から連れ込むな」

秀元が引き出しを開け、竜二のための服を出すのを彼はただ待っている。
どこにあるかなど知っているが、親しいとはいえ他人の引き出しを、竜二は開けたりしない。
ある一線は決して越えない、それは彼の性格なのか躾なのか判然としなかった。

「竜二と結婚したら、毎日会えるしなー」
「当然だろバカ」
「制服なんて毎日脱がせ放題やで、このすけべ」
「…………」
「痛い!黙って蹴んなて!」
「自業自得っつーんだ」
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