TexT;ぬらり(その他)

□猫は虎の心を知らず
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「雅次、もう一回やるぞ」
「まだか?竜二はしつこいな」
「うっせえ、さっさとやれ」
パジャマ姿の雅次が眼鏡を指で直し、リセットボタンを押す。
オープニング映像が流れ、切り替わるのを待っていると、なあ竜二、と雅次が言った。

「次は賭けないか?」
「何を?」
うーんそうだな、と首を捻った従兄が言ったのは。
「500円」
「…中途半端だな」
「そうか?」

「なんかこう…、言うこと何でも聞け、とかさ」
「じゃあそれで」
言われて、竜二は何となく墓穴を掘ったような気になる。
「竜二、式神はなしだぞ。式を喰らうのだけはごめんだ」
真剣に言われて、素直に竹筒を遠ざけた。


で、お約束通り、竜二は負ける。
「言うこと聞くか?」
「…………」
凶悪な顔の竜二。


「負けは負けだからな」
笑った雅次の顔が予想以上に近づいて、竜二は後ずさる。
「近い近い近い、雅次っ」
「ん?いいんだ、動くなよ?」
思わず動きを止めた竜二の唇に、ひとつキス。
雅次が。

「な…っにすんだ!」
ドカ。
蹴りが腹に入って、雅次は身体を二つに折った。
「ぐえ」
潰れたような声をあげて、動かなくなった雅次に、竜二は恐る恐る近寄る。
「す…すまん」
とりあえず(かなり珍しいが)謝ってみる。
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