TexT;ぬらり(その他)

□秘密の花園
1ページ/2ページ


雅次は、秋房と映画館に来ていた。
上映までの間、ロビーに貼られた新作のポスターを眺めながら、他愛のない会話をしていたときのこと。

一枚のポスターに目を止めた秋房が、これって竜二に似てるよな、と言った。

つられて見ると、そこにはレオナルド・ディカプリオ主演映画のポスター。

「似てるって…誰が」
雅次は嫌な予感を覚えながら、聞いてみる。
「え?ディカプリオに決まってるだろ」
さも意外だと言わんばかりの秋房に、雅次はげんなりした。

「…どこが」
無視したかったが、秋房が何を言い出すのか興味もあった。
なぜか得意げに、秋房は語り出す。
「ディカプリオって、時代劇のほうが合うんだよ。衣装が似合うんだな。顔も丸いし…竜二も、頬が丸いだろう?」
同意を求めないでほしい。

「あ、あと背が低いしな」
「ああ…背が低いな」
竜二が聞いたら怒り狂うだろうが、二人はそこで同意した。
面差しは全く違うのに、秋房には全然関係ないようだ。
「ディカプリオか…」
雅次は腕を組み、想像してみる。
「…タイタニック?」
「古いな、雅次」
「うるさい」

「しかし、タイタニック…竜二?実に興味深い」
「船の舳先に立つんだろ?両手を広げて、こう…竜二が、後ろから手を回して…」
言いかけた秋房の頬が、赤く染まる。
(こいつ…想像したな)
「…待て、秋房。竜二の前に立ってるの、お前じゃないだろうな?」
はたと気づいて問えば、秋房の顔が真っ赤になった。

「ば!ばか言え雅次!そんな訳あるか!!」
赤い顔のまま、慌てて手を振り否定する秋房は、認めたようなもので。
やはり聞かなければ良かったか、と雅次はがっかりした。


後日。
竜二は、秋房からタイタニックのDVDを贈られた。
話を伝え聞いた雅次は、もちろん真相を明かさなかった。
そのDVD、今はゆらの部屋にあるらしい。





あとがき
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ