TexT;ぬらり(不倫依存症)
□予告編3
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秀元の家に、女が訪ねてきた。
烏の濡れ羽色というに相応しい、漆黒の髪を長く垂らし、同じ色の瞳、抜けるように白い肌を持つ女。
はっきり美しいと形容できる顔立ちなのに、纏う雰囲気はどこか不吉。
「押しかけて悪かった」
ソファに座り、婉然と笑う女から好意は読み取れない。
「心にもないことを」
いつもの飄々とした口調で返す秀元は、手元の封筒を取り上げる。
「半分で悪いけどな、コレや」
渡された女は中身を一瞥して、自分のバッグにしまった。
「助かる、100万あれば」そのまま出した細い煙草に火を点け、ふうっと煙を吐く。
秀元は立ったまま、それを見ていた。
「…まだ、その銘柄吸ってんのや」
「いいだろう、妾の自由だ」
もう一度笑った女が、秀元に向けて煙を吹きかける。
「コーヒーくらい出ないのか?シケた男だな」
真っ白い脚をタイトスカートから惜し気もなくさらし、組み替えながら小馬鹿にした目で見上げてくる。
「オマエなあ、借金しに来てその態度はないやろ」
苦笑した秀元は、ソファに歩み寄る。
二人の顔は至近距離にあったが、笑みを浮かべる秀元に対して女の表情はひどく冷淡だった。
「もっとしおらしいトコ見せてや、カラダで払ってもろてもええんやで…狐ちゃん」
「その呼び名は止めろ!」がたん、と女が立ち上がるのと、部屋のドアが開くのは同時だった。
「…竜二」