TexT;ぬらり(パラレル)

□夢一夜
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夢を見た。

月のない暗い夜道を、魔魅流の手を引いて歩いている。
魔魅流は子供で、それなら自分も幼い姿かもしれないと竜二は思う。
何処に向かっているのか、魔魅流を急かして、早く行ってしまわねば、そればかり考えている。

子供の魔魅流の歩みは遅く、自分にはとても歯痒い。
早く行ってしまいたい、その思いばかりが募り、竜二は魔魅流を背負った。
軽い体を負い、急ぎ足で道を歩く。
魔魅流はずっと無言だ。

しばらく行くと、道端に大きな石が積んである。
不吉な予感がしたが、道は一本道で、その前を通るしかない。
魔魅流をしっかり背負い直し、足早に通り過ぎようとして、気づいた。
気づいてしまった。


これは、魔魅流の墓だ。

才能を開花できずに死んでしまった、魔魅流の墓だ。
凍りつくような思いを胸に、背の魔魅流に悟られぬよう、足取りは緩めなかった。
魔魅流はずっと無言だ。


積まれた石の前を過ぎようとした時、魔魅流が口を開いた。

「竜二が俺を殺したのは、今から丁度百年前だね」

嗚呼、そうだ。
百年前、俺はここで、
今と同じ月のない夜、
魔魅流を殺したのだ。


背中が急に重くなった。





あとがき
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