TexT;ぬらり(まみ竜)

□マミル出動
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「竜二、なにか手伝う」
魔魅流が部屋に来た時、竜二は運悪く本棚の整理中だった。


「いらん。帰れ」
「お手伝い、する」
「何もねーよ」
「…本」
確かに、いちど棚を空にするために、全ての本を床に積み上げた。
これから戻すところだったので、つまり床は足の踏み場もないくらい、本で埋まっている。

けれど、これは竜二の趣味だった。
定期的に本を入れ替え、版形やジャンル毎に使い易いように並べ替えるのが、楽しいのだ。
魔魅流に乱雑に並べられた暁には、絶縁してもいいくらいだと思っている。

「本、並べる」
「てめーに触らせる本はねえよ」
「…お手伝い…」
魔魅流の眉が歪んで、あ、コイツ悲しそう、と思っていると。
何かぶつぶつ言いながら、魔魅流は膝を抱えて座り込んだ。
竜二に背を向けて。

はっきり言って、ちょっと不気味だ。
しかしおとなしくしてるならいい、竜二はさっさと気持ちを切り替えて、趣味を始めた。

本の山もあらかた消えた頃、魔魅流の横にある本が取りたくて、竜二は何の気なしに呼んだ。
「…なに」
常に増して鬱陶しさを感じさせる(竜二の負い目かもしれなかったが)口ぶりの魔魅流に、本を取ってくれ、と頼むと。

「ラジャ!」
やたらハキハキした返事は、どこから聞こえたかと一瞬竜二を狼狽させた。
部屋にいるのは、二人きり。
自分の声でなければ、それは。
「…魔魅流…?」

「はい、本」
「あ、サンキュ…って待て!」
思わず大声を出した竜二を、魔魅流はきょとんと見る。
「お前、今の…ラジャ、て何だよ」
「お手伝いロボ」
「はあ?」

「竜二がお手伝い頼む、お手伝いロボ。ラジャ!」
何やらポーズをとり、鼻歌を歌い始める魔魅流は子供、しかも幼児だと、竜二は心底思った。


後日。
ゆらが教えてくれたTVの子供番組。
幼児が「お手伝いロボ」に変身してお母さんをお手伝いするコーナーを、熱心に見る魔魅流。
通りかかった竜二は、見なかったことにした。




あとがき
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