TexT;ぬらり(まみ竜)

□こどものなやみ
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蒸し暑さを感じ始めた午後。
竜二が学校から帰ると、ランドセルを背負ったままの魔魅流と会った。

「お前ひとりか?」
珍しい、と思いながら竜二は声をかける。
「うん、あの、…竜二の部屋、行っていい?」
なんだか落ち込んだ様子の魔魅流に、否とも言えず頷いた。


ひとまず茶を飲ませ、落ち着いた頃を見計らって話した。
「…クラスの奴に、嫌なこと言われて」
渋る口から理由を問いただせば、それだった。
拍子抜けする気持ちを抑えて聞く。
そいつの、片思いの女子が魔魅流に思いを寄せているのが気に食わない、のが発端らしい。

「オレ、この顔イヤなんだ、じろじろ見られるし、男から嫌われるし」
しょんぼりと肩を落とす魔魅流がおかしくて、竜二はとうとう声に出して笑った。
「ひどい、笑わないで」
拗ねた魔魅流に、あーすまん、と上辺だけの謝罪を渡す。

「あのな、魔魅流。お前、僻まれてんだよ、男の嫉妬は醜いっつーしな」
笑いながら説明してやっても納得しがたいらしく、こどもの頬はますます膨れる。
そうやっていると魔魅流は幼くて、竜二はつい慰めたくなってしまう。


「お前、その顔ヤなのか?」
とりあえず原点に戻そうと、竜二は話を変える。
「…女みたいって言われるし、髪も茶色いし、まっすぐじゃないし」
髪も厭だとは、初耳だった。
「竜二みたいのが良かった、黒くてまっすぐで」
憧れの視線を向けられ、そういうのに不慣れな竜二は内心動揺する。
別に大したもんじゃねえだろ、もごもご言っても魔魅流の憧れは動じないらしい。
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