TexT;ぬらり(まみ竜)
□こどものなやみ
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「…まあ、どうしてもイヤっつーなら、染めればいいんじゃねえの?」
「染める…」
適当な提案は、魔魅流に魅力的だったらしい。
「竜二、してくれる?」
真剣に見上げられ、竜二は慌てて、莫迦、と口走った。
「今すぐじゃねえよ、もっと大きくなってからだ」
「…なんで」
恨めしげな、栗色の大きな瞳。
黒髪にこれは似合わないだろうなあ、と竜二は思う。
「小中学生はダメなんだよ、高校入る時とかにしろ」
「高校デビューなんて古いよ、竜二」
「うっせえ!」
「でもオレは、魔魅流の髪や顔、キライじゃないぜ」
最後にそう言ってやると、こどもの顔が輝いた。
「え、そう?」
「今は女みてーなツラでも、大きくなってモテるのはそんなんだぞ」
見返してやれ、と続けようとすると、魔魅流にいきなり抱きつかれた。
「…?!」
「わかった!竜二の好みなら染めない、顔もコレでいい!竜二、ありがと!」
早口にまくしたて、習い事を忘れてた、とばたばた走り去る魔魅流を、竜二はただ見送った。
「…何だったんだ、あいつ?」
首をかしげた疑問に、応えるものはない。
抱きつかれた体温は、まだ竜二の体に残っていた。
→あとがき