TexT;ぬらり(まみ竜)

□その感情の名
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「竜二、浮気しないで」
とても真剣に魔魅流が言い出したことは唐突で、竜二はしばらく相手の顔を見つめてしまった。
「ね?」

「いや、ちょっと待て」
話の糸口がわからずに、竜二はまず止めようとする。
「…浮気してるの」
なんだか流れがおかしい。拗ねたような口ぶりで、魔魅流は竜二を見つめる。

「人の話を聞け、魔魅流」
どこから説明したものだか、少々悩む。
その間に、魔魅流はまた違うところに到達したらしい。
「竜二が浮気するなら、お仕置きするよ」

「魔魅流、お前な」
どうしてこう、人の話を聞かないのか。
嘆息しながら見ると、魔魅流はますます思いつめた顔をしている。
「だいすき、竜二、浮気するって考えただけで、かなしい」

「…お前の想像かよ」
些かげんなりして、なんでこんな奴に構っているのかと思う。
魔魅流の腕が伸ばされて、竜二はすっぽりと包まれてしまう。

「竜二が他の人にきもちよくされちゃったら、ヤだ」
「いっぱいすきなとこ、なめてあげるから、オレだけにして」
「きもちよくてかわいい竜二、見たい、だいすき」
囁きは熱を帯びて、触れた体もゆるゆると鼓動が上がりだす。

抱きしめられた体勢で、すべてを感じ取った竜二の熱も、じわりと上昇した。
「…この、莫迦」
また嘆息して声を出して、抱きしめられて尚たかい位置にある、魔魅流の首に両腕を回す。

後はもう、言葉はいらなかった。





あとがき
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