TexT;ぬらり(まみ竜)
□瞳はまるで
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だって、魔魅流にはなにもない。
竜二がすき、その思い以外すべてを棄ててしまった。
欲されても、渡せるほどの自身など、残っていなかった。
(この思いひとつでいいなら)
それでいいなら、今でもそうしている。
それで物足りないから、竜二は魔魅流自身を欲するのだろう。
空っぽの魔魅流の器には、なにもないのに。
いいなあ、竜二、と魔魅流は思った。
可愛くて、強靭で、叶わぬ恋に身を焼いている。
求めるのが、空っぽの自分でなければ、すぐに捕らえて渡してやるのに。
竜二のためなら、なんでもできる、誓いは何度でも立てられるのに。
求めに応じて差し出せるような自身は、いまさら魔魅流に残っていなかった。
他の女でも男でも、望むならすぐに捕らえてあげる。
けれど叶わぬ恋に身を焼く竜二に、いちばん欲するものは与えてやれないのだ。
もしかしてこれが、棄てた代償ってやつかな、と魔魅流はぼんやり考えた。
→あとがき