TexT;ぬらり(まみ竜)

□ボーイ・ミーツ・ボーイ
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久しぶりに会った従兄弟は、図抜けて成長していて、竜二を驚かせた。


「魔魅流さん、来てますよ」
誰かにそう言われ、一瞬考えるほどに会っていなかった。
記憶にあるのは、幼くて引っ込み思案な男の子。
小さかった姿を思い出し、さて大きくなれたか、と品定めする気持ちで襖を開けた。

「竜二!」
ぱっとこちらを向いたのは体のでかい、やけに派手な顔をした男。
どちら様、喉元まで出かかった言葉を飲み込んだ。
見覚えのある、栗色の頭。大きな目。
「…魔魅流か?」
「久しぶりだね!」
記憶との落差に、くらくらした。

「でかくなったな…」
しみじみと呟くと、
「成長期だから。190いったよ」
照れながらの告白に、蹴りを入れたくなる。
「竜二はあんま、変わんないね…小さくなってない、よね?」
失礼な言い草には、蹴りつけてやった。

「いったー…」
「その話はするな」
蹴りつけてやったのに、魔魅流は笑顔を崩さない。
「ねえ竜二、もう陰陽師の仕事してんの?」
「一応な」
すごいねえ、と目を丸くされる。
「家業だからしかたない、宝くじで5億当たったら辞める」
「3億じゃなくて?」
「それぐらいじゃ、この家の維持費は出ねえよ」

「お前、今日は泊まるのか?」
横に置かれたスポーツバッグに目を留め、聞いてみる。
「うん、久しぶりだから」
竜二ともいっぱい話したいし、と笑う顔は昔のようで、すこし安堵した。


大きな魔魅流はやけに上機嫌で、しつこく話しかけてくる。
(こいつ、こんなに積極的だったか?)
見た目の違和感と相まって、竜二にはいまだ戸惑いがある。
勢い、返答も適当になりがちで、気付けば従兄弟は沈んだ顔になっていた。

「…やっぱり、竜二って、」
「何だよ」
「オレのこと、眼中にない?」
「はあ?」
話の飛躍について行けず、ひどく間抜けな声が漏れた。

「そりゃ、小さいときは弱虫で泣き虫で、竜二に叱られてばっかりだったけど、」
「……」
「あれからオレも、変わろうと努力したんだ…」
言いながら俯く、頼りなげなうなじに見覚えがあった。

「…ったく、図体ばかりデカくなりやがって」
竜二がわざと嘆息すると、萎れた肩がぴくりと動く。
「莫ァ迦、今更てめえに呆れたりしねえよ。あんまりデカくなったから、驚いてただけだ」
明け透けに言ってやると、魔魅流の顔が明るくなる。
「え、そうなんだ…竜二は大きさ変わってないもんね」
「その話はすんなっつったろ!」
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