TexT;ぬらり(まみ竜)

□さくらさくら
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魔魅流の幸せ。
魔魅流本人が描く幸せは、竜二と共に居ることなんだろう。
(でも俺は、)
(魔魅流の考えで判断で)

依存ではないかたち、それがどんなものかは竜二にも想像できなかった。
けれども自分の幸せは。

(傍に居てほしい。)

ざああ、と風が吹いた。
見えない空気の流れを、桜の花片が示す。
魔魅流は黙って立っている、長身を包む黒いコートが花と一緒に揺れる。
流れる花片を見て、竜二を認め、大きな瞳を緩める。
それは依存でも、甘やかな気配で。

このぬるま湯に、いっそ浸ってしまおうかと思える程度に。

竜二は魔魅流に歩み寄る。
指を動かし、屈ませる。


「何がお前の幸せなのか、本当は誰もわからないんだがな」
そう言って、竜二は魔魅流に手ひどく優しいキスをしたので。
可哀相な魔魅流は、幸せ、が何なのかわからなくなってしまった。

(さくらさくら、花盛り)





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