TexT;ぬらり(まみ竜)

□人でなしの恋
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「お前のことは、気に入ってるよ、魔魅流」
口の端を上げて、甘やかさなど微塵もない表情で。
「けれど、顔だけだ」
中身に興味なぞないんだ、言い放つ竜二の声はすこし震えた。

あっちに行け、と手を振られたので、近寄った。
睨まれたので、抱きしめた。
ほら、こうしたら、顔は見えないでしょう?

魔魅流の手が髪を撫でても、竜二はじっとしていた。
「俺はな、魔魅流、」
「うん」
「お前のことなんか、好きじゃないんだ、」
「わかってる」

「酷い奴だろう?」
「うん、酷いよ竜二、人でなしだよ」
「…ああ、人でなしだ」

ホントに酷い。
僕の顔を見て、僕じゃない僕を思い出して。いつか会えるか、なんて淡い期待で自分を傷つけて。
それでも僕から離れられないなんて。

「僕は、竜二が好きだよ」
「……」

酷い僕。
竜二が傷ついてるのに、慰めもできなくて。
この顔だけで離れられないなら、存分に利用する。
罪悪感だけで優しくしてくれるなんて、わかってる、最初から。

「僕も人でなしだ」
「そうか」

ほら、今もその胸の奥で息づいてる、幸せな奴は誰なの。知らないよ。
いっそ竜二も壊れたら、要らない記憶が消えるかな?
この頭に添えた手に、力を込めて、


けれど実行に移せないのは、ただ、嫌われたくないがためだけだった。





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