TexT;ぬらり(まみ竜)

□ひそやかな朝
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魔魅流は目を開いて、身を起こした。
まだ冷気を感じさせる部屋に、敷かれた一組の布団。傍らに横たわる竜二。
しばらくぼんやりとしてから、ああ、と思いついて捲れた布団を直す。
竜二が寒そうだから、寒いのはきらいだったから。

竜二の目覚めはわるくないほうだが(と自分では思っているが)、寒いととにかく気分が下がる。
無神経に布団を捲って起き上がる魔魅流に反射で怒りが沸いた。
それでもじっとしていたのは、寒かったし、だるかったし、口を開くのも面倒だったから。つまりは眠かった。
そのうち気付いた魔魅流が布団を直して、竜二は満足した。

「魔魅流、起きるか?」
目を閉じたままで問うと、
「いい。竜二といっしょにいる」
予想通りの答えが返って、竜二は片頬で笑った。
「竜二、すき」
布団にまた潜り込む魔魅流も、予想通り。
ちいさな空間が二人の体温で温められ、竜二は猫のように、魔魅流に頭を擦りつけた。


「魔魅流てめえ、二度寝すんじゃねえ!」
「竜二もねてた、つられただけだもん」
「今何時だと思ってるんだ馬鹿やろう!」
次に見た時計で二人、飛び起きるはめになる。
 

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