TexT;ぬらり(まみ竜)

□黒ねこタンゴ
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「…とすると、あの妖怪…?」
竜二は(当然ながら)ひとごとではない。なにか呟きながら長考する。

昨夜滅した妖怪は、周囲に体液を撒き散らし、土や草から異形を生み出していた。
少々てこずったが…そういえば、本体が滅されても、異形は蠢いていた。
短いながら、決められた時間内は稼動する仕掛けらしく、それで手間がかかったのだ。
「あの時、浴びたか…?」
十分に気を配ったつもりではあったが。結果がこうなら、失態だ。

「…自業自得だ、仕方ない」
今のところ体調に変化はなさそうだし(外見は大いに変化したが)、時間経過で戻るかもしれない。
「様子見、だな」
ため息をつくと、腕組みを解いた。

ふと顔を上げると、未だ正座を崩さない魔魅流と目が合った。
どこか目がきらきらしているのは、気のせいか。
「竜二、終わった?」
どこか弾むような口ぶりで…俺が猫ならこいつは犬だ、と竜二は思う。尻尾があったら絶対振り回してる。

「ということで、だ。魔魅流」
呼ばれた青年の背が伸びる。
「俺は今日一日、部屋に籠もる。他の奴らに見られたくないからな」
「お前は好きにしろ、今日は勝手にしていい」
「いやだ」
即答。
「竜二といっしょにいる」
なぜかへの字に結ばれた唇を見て、また嘆息した。
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