TexT;ぬらり(まみ竜)

□いつわりのよる
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何の因果で、どうしてこんな。
のしかかる魔魅流から目を逸らし、天井を見上げた。
見慣れない、魔魅流の部屋。


魔魅流が能力開花に踏み切り、結果成功したことは、瞬く間に家中に知れ渡った。
…その、代償も。

それでも上層部は諸手を挙げて歓迎し、魔魅流は晴れて本家に迎え入れられた。
今まで使っていた客間ではなく、新しい部屋を与えられ、義兄弟として接するようお達しが出された。

壊れてしまっていても。


感情が抜け落ち、記憶もところどころ怪しいとは、竜二も噂で聞いていた。
もともと整った白い容貌は、まるで磁器人形のようで、あらためて事態の異常さを知らしめる。

開花前から何かと親しくしていた、竜二に世話役が回ってきたのはある意味当然だった。
次期当主を目され、あのゆらも世話した、となれば、魔魅流を押しつけるのに周囲は躊躇わなかった。
ゆらが、たまたま修行に出て不在だったのも裏目に出た。


そして竜二は、魔魅流は幼児なのだと認識した。
図体ばかり大きい、でもいちいち教示してやらないと何一つできない子供。
「…学べよ、魔魅流」
口癖になるほど、繰り返した。

外出するときは、たいてい一緒に出て、外のことを教えた。
傍にいないと眠れないという魔魅流のために、寝付くまでは部屋にいてやることにした。
ゆらの時よりは甘い、そう自覚はある。
不憫なのかもしれなかった。あるいは負い目か。

…その結果が、例えばこれだ。
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