TexT;ぬらり(まみ竜)

□不運な彼
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魔魅流が不器用な手つきで、脱がせてくれたのは覚えている。しばらく後、何か着せてくれたのも。
…やけに肌触りのいい、すべすべした着物だった。
絹のようだ、と頭の片隅で思って、また睡魔に屈した。
…確認すれば、よかったのに。

途中で尿意を覚えて起きた。
半分以上目を閉じたまま、慣れた道のりを往復する。
何人かが声をかけようとして、ためらったのは気がついた。
妙に滑るこの着物が乱れているせいかと、寝ぼけた頭で思い、無視してまた熟睡。

気が済むまで、寝た。


しっかり寝ると、目覚めは爽やかだ。
猫のように伸びをして、布団の感触を楽しんでいると、視界に朱が飛び込んできた。
…朱?
竜二の部屋には、見慣れない色。

朱い布が、布団の下からはみ出ている。
友禅のようだ。朱を地色に、緻密な文様が描かれた、それ。
がばと布団をまくりあげた。

それは、竜二の纏った、振袖だった。


「魔魅流ーっ!!」
怒声が響き、言言が走るまで、あと1分。


…その後、ちょうレアな竜二の写真が、ひそかに家中に出回ったとか、人気を博したとか…。





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