TexT;ぬらり(まみ竜)

□グッドバイ
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いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな


「…そういうことで、だ。魔魅流」
黄色い視界の中で、不吉な染みのように黒く滲む影。
「さよならだ」
幾度も触れ合った唇が、言葉を紡ぐのを、ただ眺めていた。


それきり、竜二は魔魅流の世界から消えた。


いちめんのなのはな
かすかなるむぎぶえ


1日目。
朝起きて、竜二の部屋を覗いて、いないのを確認すると、もうすることはなかった。
何をして過ごしたのか、思い出せない。

2日目。
朝起きて、竜二の部屋を覗いて、いないのを確認する。
することがないので、通る人を片端からつかまえ、竜二の行方を聞いてみる。
納得いく答えは、得られなかった。

3日目。
朝起きて、竜二の部屋を覗いて、いないのを確認する。
することがないので、通る人を片端からつかまえ、竜二の行方を聞いてみる。
夕食を取ると、急激に眠くなった。

5日目。
朝起きて、竜二の部屋を覗いて、いないのを確認する。
日めくりを見ると、日付が飛んでいた。どうも丸1日寝ていたらしい。
まだ眠くて、うとうとして過ごす。

6日目。
朝起きて、竜二の部屋を覗いて、いないのを確認する。
秋房がやってきて、ひどく優しい口調で、竜二は明日もどるよ、と言った。
明日が待ち遠しい。

7日目。
朝起きて、竜二の部屋を覗いて、いないのを確認する。
秋房の嘘つき。
文句を言おうと、家じゅう探したが、いなかった。


いちめんのなのはな
やめるはひるのつき


思い立って、あの菜の花畑へ行ってみた。
竜二が待っている気がしたから。
でも、黄色いだけで、黒い影は見えなかった。
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