TexT;ぬらり(まみ竜)

□グッドバイ
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いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな

ざああ、と風に合わせて黄色い花が揺れる。
このまま、と魔魅流は考える。

このまま、竜二に会えなくなったら、どうしよう。
そんなことは考えたことがなかった。
竜二に追いつきたくて、傍にいたくて、ここまで来たのに。
追いかけているはずの、竜二がいなくなってしまうのは、考えたことがなかった。

式神で、探せばいいのかな。
自分が探査に向いてないのは知っている、けど。
竜二の気配なら、誰よりもつよく辿れる気がした。


いちめんのなのはな
ひばりのおしゃべり


「…りゅうじ」
呼んでみて、頬が濡れているのに気づいた。
どうして目から水が出てるんだろう。
言言もいないのに。
塩辛い、なみだ。


いちめんのなのはな
いちめんのなのはな


「魔魅流、ここにいたのか」


振り返ると、そこには黒い影。
いなくなる前と同じ場所に。
同じ竜二の顔が。
魔魅流を見て、笑う。

「…お前、なに泣いてんだよ」
馬鹿だな、言いながら近づいた体にしがみつく。
ぎゅうぎゅうと抱きしめても、竜二は文句を言わなかった。軽くこづかれたけど。

「だって…、竜二が、さよならって…」
「…ほんっと馬鹿だな、お前」
呆れた声の竜二が、魔魅流をもう一度(強めに)こづく。
ちゃんと説明しただろうが。

「あのな、俺は精進潔斎に籠もるって言ったぞ?七日七晩」
ようやく明けたら、皆お前がおかしいって言うしよ。
わざわざ探しに来てやったら、この様だ。
人の話はちゃんと聞け。わかってるか、魔魅流?


叱られても、殴られても、竜二がいたらそれでいい。
傍にいられるなら、それだけでいい。
ずっと、一緒がいい。



いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな




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