TexT;ぬらり(まみ竜)

□ロマンス
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それは唐突な告白だった。


魔魅流の爪が伸びていて(手袋のせいで気づかなかった)切れと言えば(深爪になるのが嫌だったらしい)切ってくれと言われた。
「自分でそれくらいやれよ」
「痛いから嫌」
竜二が切ったら痛くないから、切って。
「痛くないように切りゃいいだろーが」

どこの王様かと思うほどに、傲然と差し出された手を取って嘆息した。
白くて指の長い、大きな手。
「…動かすなよ」
端的に告げて、爪切りでぱちん、と切り取る。

ぱちん、ぱちん、と細かい作業に集中していると、首をかしげた魔魅流が、顔を覗きこんでくる。
「邪魔」
一言で切り捨て、目の前の爪に意識を戻した。
ぱちん、ぱちん。

目を伏せて下を向いていても、魔魅流の視線が離れないのはわかった。
鬱陶しくて眉を寄せると、
「竜二、すき」
唐突に魔魅流が口走る。
「…あ?」

なんだそりゃ。
言いかけて、あと少しの爪が目に入る。
「お前、爪切りくらい自分でしろ」
最後まで処理してから、オレは爪切り係じゃねえぞ、と言ってやった。
魔魅流が唐突なのはいつものことで、付き合ってるとキリがない。
何を言われても、自分のペースを崩さない構えはできていた。

「おら、ありがとう、は?」
黙る魔魅流に促すと、しぶしぶ、という態で口にする。
「なんだソレ。もうしてやらねえからな」
その態度にいささかムカついて、こちらも喧嘩腰になる。
やっぱり、してやるんじゃなかった。


「竜二、ここ来て」
切った爪を捨てて戻ると、魔魅流はまだ同じ場所に座っていた。
「…何でだよ」
「いいから」
わざとらしく嘆息して、座ってやる。
向かい合う形で魔魅流が、オレの手をとった。
「…爪、伸びてねえぞ」
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