TexT;ぬらり(まみ竜)

□あいのうた
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「…あー、もう厭だ」
廊下を歩きながら竜二が口走ったのは、土曜の夕方。

後ろに付き従った魔魅流は、何のことだろうとぼんやり考えた。
そのまま自室に入ろうとする竜二の後、魔魅流も踏み入ろうとすると。
「てめーは駄目だ、入るな」
振り返った竜二に牽制された。

「何で」
純粋な問いかけのつもりは、思ったより詰問めいた響きを齎した。
「何ででも、だ」
予想していたのか、竜二は動じる事なく言葉を返す。
「今晩と、明日一日。お前はここに立入禁止だ、魔魅流」
明日は日曜で予定もないし、良かったじゃねーか、と白々と笑う竜二を、魔魅流はただ見ていた。
言われた言葉を理解するのに、時間がかかったのだ。

「…立入禁止」
「そうだ。ちなみに、」
入ると言言だからな、絶対に。
やけに力を込めて強調した後、魔魅流の鼻先で戸は閉められた。


「…はー…」
ようやく一人の空間に入り込み、竜二は大きな溜め息をついた。
ここのところ、ずっと魔魅流と一緒だった。
仕事はもとより、修行に自室まで。
夜も共に過ごすに及んで、いいかげん、一人の時間が欲しかったのだ。

魔魅流のことは嫌いじゃない(嫌いだったらセックスまでさせてない)、けれど四六時中くっついていられると、うざったくてしょうがない。
竜二は面倒見のいいほうだと自負しているが、たまには一人になりたいときだって、ある。
したいことがある訳じゃないけど。
寝転がって天井を眺めた。

そのまま、うとうとしていたらしい。
ノックの音で、竜二は目を覚ました。
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