TexT;ぬらり(まみ竜)

□あいのうた
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「竜二、ごはんだって」
廊下から聞こえる声は、魔魅流のもので。
断る理由もなく、竜二は部屋を出る。

魔魅流を見て、竜二は眉をしかめた。
外套を羽織ったままの魔魅流に、一応聞いてみる。
「…お前、ずっとここにいたのか?」
「うん」
あっけらと答える魔魅流に、いささか頭痛を覚えて、竜二の眉間の皺が深くなる。

「メシ食うんなら、まず外套を脱げ。手を洗え。それからだ」
最低限の指示だけ与え、竜二は先に行ってるぞ、と歩きはじめた。
魔魅流は慌てたように、待って、竜二、と言いながら言いつけに従っている。
わざとゆっくり歩いていると、やがて魔魅流の肩が並んだ。

「ねえ竜二」
「なんだよ」
「ごはん終わったら、オレの部屋に来ない?」
「…何でだ」
「竜二の部屋には入れないから」
どうかな?と(心なしかきらきらしてる目で)覗きこまれて、今度こそ竜二は盛大に溜め息をついた。

だから、一人になりたいって言ってるだろうが。
いいことを思いついたといった風情の魔魅流を横目で睨みつけ、足蹴にしようかと考える。
ふと、言葉が脳裏をよぎった。
(…愛が、重たい)

なんだか今の自分に合っているようで、思わず竜二は笑みを零した。
目ざとく見つけた魔魅流が、竜二、いい?と都合よく解釈してくる。

もう一度溜め息をついた竜二は、いいぜ、と言った。
その盲目的なまでの、重たい愛に免じて、今晩はつきあってやることにした。

「ただし、明日は面会謝絶な」
「え」
やっぱり、自分は魔魅流に甘い。
魔魅流の愛は、重い。




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