短編とか。

□たったひとつ
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気付いてしまった。
あたしはカルタに、嫉妬してる。


「…ずるい」

「どうした、我が家畜よ」

「……カルタはずるい。あたしはSSの癖に蜻蛉を守り切れないけど、カルタは強いから、力があるから出来る。私がもっと出来る子だったら、…蜻蛉のたったひとりのSSになれたのに」


こんなことを言っても何の解決にもならない。分かってる。分かってるけど、どうしようもないんだ。
そもそも戦えないSSなんて蜻蛉は欲しているのか、どうしてここに置いていてもらえるのか…。疑問は絶えぬほどあたしの心に積もっている。
蜻蛉はきっと困った顔をしているだろう。俯いているあたしには判断しかねないけれど、きっと。


「貴様は」


ぽつり、蜻蛉は静寂に言葉を落とす。
あたしは顔を上げることが出来ない。呆れられるのではないか、怖くて。
けれど、蜻蛉が言ったのは、想像していたものとは違った。


「カルタとは違う力で私を支えているだろう」


蜻蛉は言続けた。
私は、食事を用意してくれると。体調を気遣ってくれると。いろんな場所へ付き添ってくれると。
いつも、傍にいてくれる…と。


「貴様は私にとって必要だ。それだけでは私が貴様を傍に置いている理由にはならないか?」


そんなことを言って頭を優しく掻き撫でるものだから、あたしはつい俯いた先の視界を滲ませてしまった。
反則だ、こんなの。そんな風に、するりとあたしの我が儘を通されたら、どう返せばいいのか分からない。簡単に欲しいものを貰ってしまえば、素直な感謝も恥ずかしくて言えない。
やっぱり羞恥が勝って、あたしは俯いたまま、蜻蛉に突進するように抱きついた。
ありがと。掠れた声は届いただろうか。こんなに醜い感情を曝したあたしんを、優しさで包んでくれて。蜻蛉は本当にお人好しで甘くて優しい。
ほんと、優しすぎるよ。「今の一撃は結構キたぞ!そうか普段の仕返しだというのか!悦いぞ悦いぞー!」だなんて言いながら、泣き顔のあたしを見ないように胸を貸してくれているのだから。




上手い言葉はやはり見つからなくて、その胸に身体をうずめたまま呟いた。
「だいすきだよ」と。




*****

…ただの失敗作であります。
うううリクエストって難しいよ〜。頑張りますけどっ。

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